こう見る中国の行方

共同通信配信

京都新聞、97年2月23日、信濃毎日新聞、97年2月23日

続く改革開放路線

高度成長期の日本に似る

中国は、毛沢東時代の計画経済体制の下では乏しきを分かちあうことはできたが、その晩年には発展の契機をまったく失い、袋小路に陥っていた。この統制経済システムに市場経済を導入し、活性化することに成功したのは、ケ小平の大きな功績であろう。旧ソ連は「政治改革から経済改革へ」の戦略を用いたが、大きな挫折を経験した。隣国の混迷とは対照的に「経済改革を政治改革に優先させた中国」は、政治的安定の下での経済発展に成功した。

ケ小平という偉大な舵取りを失った今、最大の関心事の一つは、改革開放路線が変わることがありうるのかどうかだ。

これはいまでは杞憂の類であろう。なぜなら、市場経済の導入を通じて生活が豊かになり、中国の人びとがカラーテレビなど家電製品のとりこになっているからだ。働けば、より多くの所得が得られ、テレビだけでなく、洗濯機、ラジカセ、炊飯器、冷蔵庫、そしてテレビゲーム機やビデオが買えるようになった。これが中国の現実だ。

かつて修道院のような生活を送っていた中国の人々は、今や消費欲望に目覚めた。「人間解放」という白日夢は消えたが、日々の「生活の質」は着実に向上するシステムが既に形成されはじめた。今日の姿は六〇年代の高度成長期の日本の姿に酷似している。

今後、少なくとも一〇年以上、中国では高度成長が続き、人びとは「向銭看(金銭本位の処世観)」という経済マインドで動くものと予想される。

では今後の課題は何か。中国ではいま年間千数百万の新規労働力が生じ、ここに、インフレによる年金生活者の犠牲か、安定成長による若者の失業かという厳しい選択がある。中国の場合、経済発展の潜在力が存在し、若者の就業こそが政治的安定にとってより肝要であるから、成長第一の路線を採るべき必然性があると私は分析している。

現在は消費生活の高度化、構造変化の最中にある。消費内容の高度化に伴う値上がりの側面が大きい。物価高にもかかわらず、実質消費は落ち込んでいないし、市場は活気に満ちている。悪性インフレ寸前までいった物価は昨年来、安定化に向かっている。

第二の問題は貧富の格差の拡大である。「先に豊かになれる者が豊かになる」政策で、格差が拡大したのは事実だ。だが、水位の落差があると水が激しく落ちるように、人びとはより高い所得を求めて激しく移動している。第三は地球環境の問題である。地球人口の四人に一人(あるいは五人に一人)が中国人である。この膨大な人口が先進国なみのエネルギー消費を行なうならば、人類が地球の生態環境的限界に直面することは明らかである。地球環境の制約の下で「持続的成長」をいかに確保するかは、人類共通の課題だが、とりわけ中国においてこれは重要である。一人っ子政策とは地球環境問題に対する中国流の挑戦なのだ。この実験は大いに支持するに値する。