内山書店『中国図書』1997年1月号

1戴向青、羅恵蘭著『AB団与富田事変始末』(鄭州、河南人民出版社、一九九四年)

一九二六年末、アンチ・ボリシェビキ団(すなわちAB団)が組織され、国共合作を破壊しようとしたが、これは共産党の努力で三カ月で解体された。三年後の一九三〇年五月、毛沢東は李韶九を富田に派遣してAB団粛清を命じた。これは敵情を誤認した粛清であり、これに反発した側が富田事変を起こした。毛沢東はなぜ敵を誤認したのか。富田事変の悲劇の全貌がこの本で細部まで理解できる。

2席宣、金春明著『「文化大革命」簡史』(北京・中共党史出版社、一九九六年)

一九九六年は文化大革命が始まって三〇年、終わってから二〇年であり、文革に関わる書物がいくつか出版された。本書の著者席宣は中共中央党史研究室研究員、金春明は中共中央党校教授である。「われわれの世代は文革の体験者であり、辞することのできない責任をもつ」とする立場から、本書が書かれた。信頼できる「簡史」である。

3図們、祝東力著『康生与「内人党」冤案』(北京、中共中央党校出版社、一九九五年)ウランフが「総頭目」といわれた内蒙古人民革命党冤罪事件は一九六八年に発生し、三・四六万名が迫害を受け、一万六二二二名が殺害された。この冤罪事件は死者の多いこと、「毛沢東思想学習班」の名において拷問が行われたことなど、文革期の冤罪事件のなかでもきわだっている。著者の図們少将は蒙古族、解放軍軍事法院副院長などを歴任した。

4房学嘉著『客家源流探奥』(広州、広東教育出版社、一九九四年)

客家文化は中原で発生、形成され、南に波及したのか。それとも中華の大地にそれぞれの地方文化の源流があり、相互に融合し、影響しあい、吸収しあってきたのか。客家人が中原から「南遷」した史実はない。客家地区に「中原流人が南遷した事実」はあるが、当地の者と比べると、つねに少数であった。客家についての通説を批判した面白い本。

5呉国光、鄭永年編『論中央・地方関係』(香港、牛津出版社、一九九五年)

巨大国家中国にとって中央政府と地方政府の関係をどう扱うかは、きわめて重要な課題だ。アメリカのプリンストン大学に学んだ二人が「集権・分権・再集権」の堂々巡りから脱却し「国家統一を保持しつつ経済発展を促し、国家制度の転換を推進できる中央・地方関係の構築」のために、具体的な提案を試みた。たとえば全国人民代表大会に「地方事務委員会」を設け、「地方基本法」を制定して省級地方政府の権限を定めよ。同時に、地区級以上の都市に「中央政府弁事処」を設けよ。地方指導者の軍隊兼職と軍隊指導者の地方兼職を廃止せよ。現行の一級行政区を約六〇コに細分せよ、などである。関連書に、呉国光編『国家、市場与社会』(香港、牛津出版社、一九九四年)がある。