2000/11/19 公開
担当:カルネアデス

ADAM の続き (仮名)

桐野杏子 #19


本部長と佐久間さんが射撃場へ入ろうとする少し前、何かが射撃場より飛び出してきたわ。
更にその何かの頭上を光る何かが――あの本部長に笑われてしまった
私の中の『なた』が‥‥通りすぎ壁へ突き刺さった。

それが今、目の前の壁に突き刺さっているわ。
『なた』が通り過ぎた下に居るのはあの男の子!?

射撃場は薄暗い‥‥さっきの爆発で照明も少しは駄目になっているかもしれないけど。

男の声「ぐわああああぁぁぁぁぁ!!!!

その直後、男性のモノと思わしき叫び声が内調全館へ響くんじゃないの?‥‥というぐらいに聞こえたわ。

私たちが――佐久間さん、本部長、氷室さん、私の順番に部屋に入ると、
天城さんが液体――血と思わしき赤きモノの中央に座り込んでいる光景が展開されていた。
それが血であると語るが如く、赤き血潮はその勢力を広げ、射撃場を飲み込もうと
じりじりとその染みの勢力を広げていく‥‥。

甲野三郎「天城君!?」

氷室恭子「小次郎!?」

桐野杏子「天城さん!?」

私たちの呼び声が掻(か)き消されるほどの天城さんの声‥‥。
その呼び声に向き返った天城さんは吠えるのを止め、前のめりに倒れた。

殺し屋さん「‥‥また邪魔者か。」

声に向き直ると射撃場中に人影を見た。
人影はゆっくりと顔を上げ、こちらに向き直る殺し屋さん‥‥よね。
その刹那、左目の辺りを負傷していたのか、両目に血飛沫(ちしぶき)が迫る。

殺し屋さん「く‥‥血か!?」

その好機に、本部長と佐久間さんが動いた。
殺し屋さんは血が目に入っているにもかかわらず『なた』を佐久間さんへ向かって振った。

その『なた』を『モデルガン』で受ける佐久間さん。
その隙に本部長が殺し屋さんの顔目掛けて腕を一閃した。
本部長の手が通り過ぎた軌跡には一筋の血筋が現われ、血飛沫が上がる。

甲野三郎/佐久間裕一「きょうこ君!!」

桐野杏子/氷室恭子「は、はいぃ!!」

そうよ、ぼけっとしている暇じゃないの。
氷室さんが天城さんへ駆け寄る、私は射撃場の外で倒れている男の子へ駆け寄る事にした。

桐野杏子「ちょっと君、しっかりして!!」

男の子の肩を掴み、がくがくと揺らす‥‥駄目だわ、心ここにあらずって感じよ。
痛みを持ってこちらの世界へ呼び戻す?‥‥いえ、逆効果な気がするわ。

判らない‥‥どうすれば、私は男の子を力一杯抱きしめた。



    臨時の視点、氷室恭子。

    私は再び小次郎に再会した‥‥変わり果てた小次郎と。
    左手首より湧き出した鮮血は小次郎を真っ赤に染め上げていた。
    昔の小次郎だったらこうはなっていなかたの?‥‥と思う気持ちを押さえつける。

    今、そんな事を考えている余裕はないのよ。
    私は小次郎の右に屈み、小次郎の腋(わき)に肩を入れ、起こそうとした。

    天城小次郎「‥‥ってくれ、‥‥むろ。」

    その行動は小次郎の呻(うめ)き声にも似た‥‥いいえ、
    呻き声そのものかもしれない言葉に中断させられた。

    氷室恭子「‥‥‥‥。」

    天城小次郎「ひだり‥‥て‥‥び‥‥きられち‥‥った‥‥ってか‥‥と。」

    氷室恭子「!?」

    左手に視線をやると‥‥小次郎の左手首はなかった。
    失われた左手はすぐ側にあった‥‥けど、流石の私もこの時ばかりは固まった。


私は天城さんと氷室さんに魅(み)入っていた、どうすればいいのか途方に暮れていたから。
不意に「うぶ‥‥。」と何かが聴こえた、それも近くから。

突如左胸に何かが被(かぶ)さり、私を押し除けようとするような感覚を覚えた。
よそ見をやめて、前に向き直ると‥‥男の子が私の胸でもがいていた。
すぐさま腕を緩めてを解放すると、堰(せき)を切ったように噎(む)せはじめる男の子。

‥‥まぁ、終りよければ全て良しよね!(注:もう少しで犯罪者でしたよ、桐野さん。)

男の子「ごほごほ‥‥きょ、杏子‥‥さん?」

完全に意識を取り戻させることに成功したみたいね!
私に再開出来た嬉しさのあまり涙なんか流しちゃって‥‥可愛いんだから!(違うって。)

桐野杏子「大丈夫だった?」

男の子「‥‥うん、小次郎さんは?」

私は天城さんのいる方を一瞥した、それに従い男の子も視線を走らせる。

氷室さんの膝の上に上半身をうつ伏せにしている天城さんの姿があった。
あら、何か様子が変じゃない? 全然動こうとしてないような‥‥?

桐野杏子「氷室さん!」

私達がボケっとしている時間は皆無‥‥と気付いた時、自然とその科白が声帯を振るわせた。
氷室さんの顔が驚きと困惑に支配されていた‥‥様に見えたんだけど、
私に向き直った時は初めに顔を合わせた時の表情に切り替わっていた。

未だに私の腕から解放されていない男の子の鼓膜を私の呼び声が強襲してしまい、
再び涙腺を刺激してしまった事になってしまったんだけど‥‥。

to be continued ...


あとがき

こんにちはカルネアデスです。

前回予告を公開してしまったので、次のお話が公開できないという事態に陥ってました(笑)

ただの予告じゃなくって懸賞付でしたから‥‥正解者は1名いました、
肝心の解答はまた後日なのですけどね。正解は9名でブギーさんでした、おめでとうございます。
かなり曖昧でしたけど‥‥といっても応募総数が2通でしたので‥‥
1026さんにも要望があれば書いちゃいます!‥‥確約は出来ませんけど (^^;
とりあえず投稿作品原案をくださいました m(_ _)m

えっと次に‥‥見ての通り題名を暫定で付け替えました。
ひっくるめたのだけたまに取り替える予定ですので、内容の題名は変わっていません。

次回更新時は『THE SPIRAL FACTOR』にします(苦笑)

‥‥と連絡事項はここまでです、はたから見たら何やってるのというような調整をしていたので、
公開が遅れた訳ですけど‥‥まぁそれはまた後ほど書きますです。

結局前回の小次郎編があんなんだったので‥‥杏子編の方だけで話が進みそうです。今回のは、
恭子編が挿入されていますけどね‥‥まぁ、杏子編の方はさくさく進んでいますけど‥‥。

今回、綺堂杳さんに頂いたCGを公開したしました。
再現のを書いた理由の内に「綺堂さんの為に!」という意味合いが強かった為、
一筆描きましょうか?とありがたいお言葉を頂きまして、甘えさせていただきました。

下絵を送ったのですぐに上がってきたんですけど‥‥更新と同時に公開するのが
望ましいと思い、公開時期がおしまくってしまいました、申し訳ございません m(_ _)m

今回はそろそろ師走なので最終更新日を決めたいかなと思っています、
何時がいいでしょうか? 更新されるかは不明なのですけど‥‥ (^^;
感想と一緒に一筆いただけると助かります、それでは。


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