1999/08/24 公開
担当:カルネアデス


機動戦艦ナデシコ

これから (仮称)


#12 『感情の雫(しずく)』


マキビ・ハリ「三郎太さん。」

高杉三郎太「ん?」

マキビ・ハリ「やっぱり。」

満面の笑(え)みで三郎太を見るハーリー。

高杉三郎太「なっ、なんだよ……気持ち悪いなぁ。」

マキビ・ハリ「やっぱり三郎太さんは、木連の軍人さんだったんですよね。」

『ふんっ』 と鼻で返事する三郎太。

高杉三郎太「今ごろ気がついたの? おまえ……。」

その行動に思わず吹き出すハーリー。

マキビ・ハリ「あははははは……。」

高杉三郎太「よ〜し。やっといつものお前に戻ったな。」

マキビ・ハリ「三郎太さん……。」

高杉三郎太「おっと、俺に惚れたか?」

マキビ・ハリ「むかっ!」

せっかく、見直したのにぃ、この人は……。

高杉三郎太「え、どうなんだ?」

顔を付き出す三郎太。

マキビ・ハリ「三郎太さんの……。」

目を閉じる三郎太。

マキビ・ハリ「ばかぁーーーーーー!!」

三郎太の耳に殺人超音波が炸裂する。

高杉三郎太「いいいいぃぃぃ……。」



高杉三郎太「何だよあいつ……。」

てっきり、殴るものだろうと踏んでいた三郎太は思いっきり意表を付かれた。
そこにハーリーの姿はもうなく、どこかへ行ってしまったようだ。

高杉三郎太「お姫様だけでなく王子様の相手もしなくちゃならないのか……。」

言葉とは裏腹な心持ちを楽しんでいる三郎太であった。

高杉三郎太「はぁ……。」





長い沈黙があった……。

マキビ・ハリ「ルリさんは本当にそれでいいんですか!」

ホシノ・ルリ「…………。」

ルリは応(こた)えない。

マキビ・ハリ「ぼっ、僕は……。」

言葉に詰まるハーリー、しかし。

マキビ・ハリ「貴女(あなた)の……ルリさんのそんな顔は見ていたくありません!!」

ホシノ・ルリ「え?」

ルリがハーリーの顔を見る。

ホシノ・ルリ「!?」



ハーリーが目から涙の雫を零(こぼ)している。

マキビ・ハリ「はははっ……初めて……初めて人を殴っちゃった……。」

頭をポリポリ掻(か)くハーリー。

ホシノ・ルリ「…………。」

そしてルリに背中を向けるハーリー。

マキビ・ハリ「アキトさんか……まだ探しに行かないんですか?」

ホシノ・ルリ「…………。」

マキビ・ハリ「やっぱりル……。」

頭を振るハーリー。

マキビ・ハリ「艦長はあの人のことを……。」

ホシノ・ルリ「………………。」

マキビ・ハリ「………………。」

ホシノ・ルリ「………………。」

マキビ・ハリ「はははは……やっぱりそうですよね……ぇ。」

ルリの顔を見て金縛りにあうハーリー。

ホシノ・ルリ「あの人が 『帰って来ない。』 って解かった時も……
                 涙は出なかったのに……何で……?」

ルリが涙を流している。

ルリを泣かせてしまった事でやるせない気持ちになるハーリー。



でも、

外へ気持ちをぶつけないよりはましですよね?
そう思いませんか? アオイさん、記憶喪失さん、三郎太さん。




ホシノ・ルリ「あの人は変わってしまった……。」

マキビ・ハリ「…………。」

ホシノ・ルリ「出会いがあって、別れがある……こんな当たり前のことなのにね……。」

マキビ・ハリ「怖いんですね……。」

ホシノ・ルリ「…………。」

マキビ・ハリ「大丈夫ですよ。僕らがいますから。すべてはこれからです。」

ホシノ・ルリ「ありがとう、ハーリー君。」

満面の笑みのルリ。
まだ、感情の雫(しずく)が消えてはいない……。

ハーリーは目をうがった。
そう、その笑顔はまるで――――――――。

ホシノ・ルリ「わたしは……私はあの人が……。」

to be continued ...


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