息も雨も上がっった頃、ハーリーはやっとの事でルリを見つけた。 マキビ・ハリ「はぁはぁ……ルリさん……。」 ルリは展望台にいた。 声をかけられても振り返らずに景色を見続けるルリ。 先ほどまで降っていた雨が全身をぬらしている。 ホシノ・ルリ「ハーリー……君。」 マキビ・ハリ「ルリさん。」 みつめあう、ルリとハーリー。 ホシノ・ルリ「私ね、艦長の…………いえ、ユリカさんのブーケを受け取ったの。」 夕焼け空を見上げるルリ。 まだ乾ききっていない髪が夕日に照らされる。 ホシノ・ルリ「やっぱり迷信なのかな……。」 うつ向きながらつぶやくルリ。 ホシノ・ルリ「私がブーケを受け取ってからなの……みんな不幸になって…………。」 マキビ・ハリ「…………。」 ハーリーは目を閉じて深呼吸する。 マキビ・ハリ「すうぅ……。」 そう、覚悟を決めることにした。 マキビ・ハリ「ルリさん……。」 ハーリーの方に向き直るルリ。 その刹那(せつな)……。 ホシノ・ルリ「!?」 『ぺちっ』 ルリの頬に軽い衝撃が走る。 マキビ・ハリ「…………。」 頬を押さえるルリ。 ホシノ・ルリ「…………。」 何が起こったのか解らないという表情(かお)のルリ。 『バシィィィィィィッ』 痛々(いたいた)しい音が静寂を打ち破る。 三郎太の右手がハーリーの頬を引っ叩く。 高杉三郎太「いつまでも甘ったれてんじゃないぞ、ハーリー!」 マキビ・ハリ「…………。」 ハーリーの頬が赤く腫れ上がる。 高杉三郎太「どうしたぁ、ハーリー。」 力任せに胸倉(むなぐら)をつかむ三郎太。 しかしハーリーの目の焦点は合わず虚空(こくう)を見つめている。 高杉三郎太「……初めてぶたれた、って感じの表情だな。」 三郎太のハーリーを見詰めるその目はいつになく真剣だ。 高杉三郎太「いいかげん目を覚ませよ。お前にはお前にできる事があるだろ!」 マキビ・ハリ「…………。」 胸倉から手を放し、突き飛ばす三郎太。 その力を流しきれずに尻餅をつくハーリー。 高杉三郎太「俺達がお姫様を守らなくってどうするんだ?」 その真剣なまなざしから目を反(そ)らすハーリー。 高杉三郎太「お前が未(いま)だに発揮されていない、花嫁のブーケの力をよび起こせよ!」 マキビ・ハリ「花嫁のブーケ?」 高杉三郎太「そうだ。」 マキビ・ハリ「…………。」 高杉三郎太「……何だ? お前、 『ブーケ』 って知らないのか?」 ちょっと呆(あき)れる三郎太。 マキビ・ハリ「むかっ。」 そっぽをむくハーリー。 マキビ・ハリ「それぐらい知ってますよ。結婚式の時に新婦が投げる物でしょ。」 高杉三郎太「……意味は知らないのか?」 マキビ・ハリ「結婚式に立ち合ったことなんてありませんから……。」 高杉三郎太「いいか、ハーリー。新婦のブーケにはなぁ、幸せが込められているんだ。」 マキビ・ハリ「…………幸せ?」 高杉三郎太「結婚式の最後には、必ず新婦がブーケを投げる。」 『ブーケ』 を投げるしぐさをする三郎太。 マキビ・ハリ「幸せを込めて……捨てちゃうんですか!?」 高杉三郎太「いや、ちがう。」 三郎太の目が優しく見える。 高杉三郎太「幸せを分け与えるんだ。 『俺達の幸せをこのブーケに込めて。』 ってな。」 マキビ・ハリ「……迷信なんでしょ?」 高杉三郎太「そうかもな。 だけどみんなそうやって…… 人間の心なんて自分の信じるものの為に、 いくらでも自分勝手に変える事だってしちゃうんだぜ。」 マキビ・ハリ「…………。」 高杉三郎太「迷信を迷信のままにしておくか、現実のものにするかは、 人それぞれだぞ、ハーリー。だからよぉ。」 ハーリーの肩に手を乗せる三郎太。 高杉三郎太「だから俺達は迷信を現実のものにするんだ。」 |
なぜかあとがき これは 旧#11 と 旧#12 を合わせたものですが……。 元々14個に分けてしまったので増やしたは良かったがこれでは……。 ちゃんと考えてあるから大丈夫ですけどね、13話で終わるように。 |
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