1999/08/21 公開
担当:カルネアデス


機動戦艦ナデシコ

これから (仮称)


#11 『花嫁のブーケ』


息も雨も上がっった頃、ハーリーはやっとの事でルリを見つけた。

マキビ・ハリ「はぁはぁ……ルリさん……。」

ルリは展望台にいた。
声をかけられても振り返らずに景色を見続けるルリ。
先ほどまで降っていた雨が全身をぬらしている。

ホシノ・ルリ「ハーリー……君。」

マキビ・ハリ「ルリさん。」

みつめあう、ルリとハーリー。

ホシノ・ルリ「私ね、艦長の…………いえ、ユリカさんのブーケを受け取ったの。」

夕焼け空を見上げるルリ。
まだ乾ききっていない髪が夕日に照らされる。

ホシノ・ルリ「やっぱり迷信なのかな……。」

うつ向きながらつぶやくルリ。

ホシノ・ルリ「私がブーケを受け取ってからなの……みんな不幸になって…………。」

マキビ・ハリ「…………。」

ハーリーは目を閉じて深呼吸する。

マキビ・ハリ「すうぅ……。」

そう、覚悟を決めることにした。

マキビ・ハリ「ルリさん……。」

ハーリーの方に向き直るルリ。

その刹那(せつな)……。

ホシノ・ルリ「!?」

『ぺちっ』

ルリの頬に軽い衝撃が走る。

マキビ・ハリ「…………。」

頬を押さえるルリ。

ホシノ・ルリ「…………。」

何が起こったのか解らないという表情(かお)のルリ。








『バシィィィィィィッ』


痛々(いたいた)しい音が静寂を打ち破る。
三郎太の右手がハーリーの頬を引っ叩く。

高杉三郎太「いつまでも甘ったれてんじゃないぞ、ハーリー!」

マキビ・ハリ「…………。」

ハーリーの頬が赤く腫れ上がる。

高杉三郎太「どうしたぁ、ハーリー。」

力任せに胸倉(むなぐら)をつかむ三郎太。
しかしハーリーの目の焦点は合わず虚空(こくう)を見つめている。

高杉三郎太「……初めてぶたれた、って感じの表情だな。」

三郎太のハーリーを見詰めるその目はいつになく真剣だ。

高杉三郎太「いいかげん目を覚ませよ。お前にはお前にできる事があるだろ!」

マキビ・ハリ「…………。」

胸倉から手を放し、突き飛ばす三郎太。
その力を流しきれずに尻餅をつくハーリー。

高杉三郎太「俺達がお姫様を守らなくってどうするんだ?」

その真剣なまなざしから目を反(そ)らすハーリー。

高杉三郎太「お前が未(いま)だに発揮されていない、花嫁のブーケの力をよび起こせよ!」

マキビ・ハリ「花嫁のブーケ?」

高杉三郎太「そうだ。」

マキビ・ハリ「…………。」

高杉三郎太「……何だ? お前、 『ブーケ』 って知らないのか?」

ちょっと呆(あき)れる三郎太。

マキビ・ハリ「むかっ。」

そっぽをむくハーリー。

マキビ・ハリ「それぐらい知ってますよ。結婚式の時に新婦が投げる物でしょ。」

高杉三郎太「……意味は知らないのか?」

マキビ・ハリ「結婚式に立ち合ったことなんてありませんから……。」

高杉三郎太「いいか、ハーリー。新婦のブーケにはなぁ、幸せが込められているんだ。」

マキビ・ハリ「…………幸せ?」

高杉三郎太「結婚式の最後には、必ず新婦がブーケを投げる。」

『ブーケ』 を投げるしぐさをする三郎太。

マキビ・ハリ「幸せを込めて……捨てちゃうんですか!?」

高杉三郎太「いや、ちがう。」

三郎太の目が優しく見える。

高杉三郎太「幸せを分け与えるんだ。 『俺達の幸せをこのブーケに込めて。』 ってな。」

マキビ・ハリ「……迷信なんでしょ?」

高杉三郎太「そうかもな。 だけどみんなそうやって……
                  人間の心なんて自分の信じるものの為に、
                  いくらでも自分勝手に変える事だってしちゃうんだぜ。」

マキビ・ハリ「…………。」

高杉三郎太「迷信を迷信のままにしておくか、現実のものにするかは、
                  人それぞれだぞ、ハーリー。だからよぉ。」

ハーリーの肩に手を乗せる三郎太。

高杉三郎太「だから俺達は迷信を現実のものにするんだ。」

to be continued ...


なぜかあとがき

これは 旧#11 と 旧#12 を合わせたものですが……。
元々14個に分けてしまったので増やしたは良かったがこれでは……。

ちゃんと考えてあるから大丈夫ですけどね、13話で終わるように。


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