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1999-03-19
takes034
女王蜂/スターライト

◎太陽系外第2期調査船「ビーグルIII」乗務員の日記より転載

− 民俗社会学班主席調査官 アルベルト・シュリーマン

2403年03月29日。
 ついに今日船長は帰還プログラムの発動を指示した。

途中ヴロコフェッチ中尉が駐在するタウIIの惑星ネオテバイを経由しても、地球まで約1年のコースである。

われわれの銀河系外探査の旅もいよいよ終わりがちかづいてきたわけだ。もともとこんな条件の調査旅行を志願するようなメンバーだけに、帰還決定を知ったときのみんなの気持ちは、嬉しさより旅の終わりの寂しさの方が強かったような気がする。

当初の予定より2年も延長されたが、その分成果も予想を上まわるものになった。天文学物理学生物学上の発見は過去1世紀に相当するといっても大げさではない。主席生物調査官ゲリーのノーベル賞はまちがいあるまい。

私のような社会学系の人間の出番はないのではと思われたが、ネオテバイの恐竜族のように、地球人の古代を連想させるような文明を持った種族との出会いがあり、退屈してるような暇は全くなかったのは予想外の喜びだった。

短い滞在期間に採取した多くの伝説神話民話は地球と類似の点もあり、まるで違う異種族ならではの特徴あり、まだまだ研究しなければならないことばかりである。

なかでも発見したいのは、南半球で進化した直立龍人ピュトノサウルスが、15万年前に北の大陸に渡ったことを立証する伝説である。採取した全ての伝説をコンピュータで分析しているが、まだこれだというような結果は得られていない。

頻出する「飛行する英雄」の伝説は、ピュトノサウルスの先祖は飛べたのではないかという説の根拠であり、そうであれば隔絶した大陸を移動する手段については解決なのだが、まだまだ決定とは言えない。

それとは別の「飛行する種族」の伝説もあり、ピュトノサウルスの先祖より太古にネオテバイを支配していた昆虫のような神々の末裔だとか、そうではなく神々に滅ぼされた悪魔の種族がときどき蘇っては神々の子であるピュトノサウルスに害をおよぼすとか、伝説にありがちな多くの異説がある。

まるで天使と悪魔のような二面性のあるこの伝説は私を魅了するところ大きい。ときどき昆虫様の翼を持った美女の夢を見るくらいだ。

願わくば、あの誇り高き恐竜族の星への寄港が長からんことを。

4年前よりはるかに成長したであろうハルモニア王女に、私の研究の成果を話したなら、どんなに喜んでくれることだろう。

数ケ月前からネオテバイとの通信が途絶えてるのがちょっと気がかりだが、なに、もうすぐ直接会えるのだ。それまでコンピュータ分析をもうひとふんばりしておくことにしよう。

【追記】
 このときの私は、ネオテバイで何が起きているのかも、ビーグル号の乗員をお そう運命も知らない。
 もちろん「有翼の美女」や「飛行する英雄」と出会うことも……

高解像度にして別バージョン「女王蜂/昇天」150KB

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