異常なワンルームマンション

 私がワンルームマンション嫌いなのは、自分自身がワンルームマンションに住んでいた経験に基づいている。自分自身で選んだ部屋なので文句は言えないが、私も大学への入学準備をしていたときは、まだまだアホだったわけである。

よくあるモデル的部屋
かつての私の部屋

 右の図を見てもらいたい。上が、受験雑誌や不動産屋の冊子で紹介されている部屋の見本の典型であり、下が私のワンルームマンション時代の部屋である。
 下の部屋の図で、左上と右下が欠けているのは、柱や共益設備のスペースである。
 ちなみに、私の絵が下手なだけで、縦の幅はもっと狭いと考えてほしい。

 私はベッドが好きではない。
 畳に寝たいというのもあるが、それよりもスペースを食われるのが気にいらないのである。ベッドの上で生活するようなマネはしたくない。地方出身の男子学生は、割とベッド嫌いな人間がいるそうだが、私もその一人である。


 しかし、学生ワンルームマンションは、基本的にベッドを使うことを前提にしている。そのため、収納スペースに布団が入る余地はない。だから私は、この部屋では布団は畳んで、部屋の隅に蹴飛ばしておいた。狭い部屋を有効に使うためである。
 本棚は背が高いものを選び、入学当時からプリンター・フラットベッドスキャナー・MOドライブを備えていたパソコンは、縦に積むことでなんとかコンパクトにまとめた。どう考えても、キーボード板の真下に置くというスキャナーの位置は異常だったが。
 また、サークルの仲間や高校時代の友人が連んで訪ねてきても、ベッドに空間を支配されていないため、床に座ってゲームや酒を存分に楽しみ、そのへんに幾人もが転がって雑魚寝できた。


 基本的に狭くて、物を増やすのが困難であること、布団がいかんともしがたいことを除けば、ワンルームでも私なりの生活をすることはできただろう。私は押入のあるアパートの方が性に合っていると考え、引っ越ししたいとは思いつつも、4年間この部屋で暮らせたかもしれない。
 だが、結局私は引っ越すこととなった。


 布団を部屋の隅に置いておくことは大した問題ではないとしても、収納スペースが備え付けの箱であるというのは看過できぬ。6帖と表記された部屋ではあったが、その6帖に収納スペースと称する箱や、使いもしない机が存在し、実質4帖程度というのは暴利な気が。
 さらに、オートロックや、常駐管理人というすばらしい設備を備えたマンションではあったが、これもサギみたいなものだ。オートロックは常時「故障中」で開閉自由、常駐管理人なる人間は1度も見たこともない。管理費は凄まじい額を払っていたのに。
 電話は内線の一種であり、テレホーダイなどのNTTのサービスを受けることや日本テレコムなどに加入することもできぬ。これ自体は仕方がないとしても、管理会社から請求される電話料金は通話時間を逐一計って計算したが、どう考えても割高であった。ネットやるのには辛い。
 さらに、部屋の何処からか、夜中に得たいの知れぬ怪音が断続的に鳴り響いて私の睡眠を妨害し、水道は錆で濁って飲む気になれず(飲んでいたけど)、家賃はオートロック云々を備えた同クラスのマンションと比較しても、あまりに高額。


 もはやこのマンションに住む理由はなかった。
 そういうわけで、私は1年住んだだけで、家賃も安く、作りも安い木造アパートに引っ越した。今(2000/11/26)も住んでいるこのアパートは、快適である。


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