北陸旅行
2000年09月04〜6日(月〜水)

疲労困憊
2000年09月04日(月)昼過ぎ〜夜


 さて、目的もなくドライブを続け、もともと寝不足を押していた私の疲労は目立つようになってきた。出発前日に午前1時から4時まで3時間寝たっきりだ。その前も、いつ寝たのか覚えていない。運転することさえも、そろそろ恐ろしくなってきた。道の駅いおりに車を止めて、ここでちょっと休む。



 車に戻って、イスを目一杯倒して、二人して寝る。
 ・・・眠れん。時刻はだいたい午前2時。太陽は頭上から車内へと容赦なく照り注ぎ、気温は窓を開けても蒸し暑かった。しばらく眠ろうと試みたが、少しも眠くならなかった。私は寝ることを断念し、緑茶を大量摂取して、覚醒しようと試みる。
 課長も結局眠れなかったようで、私が提示した早期出発案に賛成。早く宿をとって、そこでゆっくり休もうということとなった。


 だが、道の駅に駐車場を出るとき、早速擦った。
 いかん。だが、この混み合う駐車場で再び駐車することなど出来ず、公道まで出てしまった。可能な限りゆっくりと、奥歯を噛みしめて集中して慎重に運転した。
 そうしてたどり着いた高岡市のショッピングセンター。ここには広くて空いている駐車場がある。ここで、車を止めて少し休む。これ以上走るのは危険すぎる。もう私は、油断すれば意識がどこまでも落ちていきそうになっていた。
 出がけに擦ったバンパーは、白い塗料が付いていた。少し焦った。またレンタカー屋にカネ払うのか。しかし、緑茶で磨いてみると、バンパーにこびり付いた塗料はすべて落ちた。よし、これで大丈夫だ。キズにはなっていない。いや、そんな後で払う何万かのカネよりも、今大切なのは、無事に生きて返ること、無事に宿に泊まることであった。


 そして休む。さすがはデミオ、一応はハッチバック。説明書片手にフルフラットなどにしてみて、眠ろうと試みるが、カフェイン・ニコチンのオーバードーズ、極限まで高めた緊張と集中、蒸し暑い大気。とても寝られなかった。それでも、気を利かせてくれた課長は長いこと車から離れて散歩に出ていき、私は少しばかり休むことが出来た。


 日も傾きはじめた頃、課長が戻ってきて言った。
「富山まで行きましょう!」
 多少休んでも、疲労困憊で睡眠不足なのに代わりはない。眠りたいが眠れない。それでも、油断すれば意識はどこまでも低迷して落ち込んでいきそうだった。運転するのは避けて、近くに宿ないか、タクシーかバスで宿まで行こうか、と考えていたのだが、課長は富山市の宿まで来るまで行くことを主張した。安宿に関しては課長は詳しい。富山市までいけば、安宿は山とあるとのこと。行くしかない、とのことである。「寝なければ死にます!」。出発を渋る私を追い立てるように、課長は出発を促した。
 やるしかないか。私はタバコを根本まで一気に吸って深呼吸し、緑茶を飲み干した。そして、この手の疲労時の運転では必ず噛みしめるブラックガムを口に放り込み、サイドブレーキを下げて、シフトをDに入れた。最後の集中力を発揮するときが来たのである。


 高岡から富山までは、バイパス一本で行けた。幸か不幸か帰宅ラッシュ。道は混み合っていたが、流れは遅かった。車線変更など最低限しかせず、前後の車間距離、左右からの割り込み、バイクの3つだけに注意して低速で運転した。
 デミオは3速ATなのだが、このトランスミッションは街乗りとしては優れている。低速トルクが太く、エンジンブレーキもよく利く。私はATでもシフトチェンジを頻繁に行うのだが、このときは特にシフトダウンを多用した。フットブレーキだけでは自信がなかった。また、多くの行動を行うことによって、脳を覚醒させようとしていたのである。


 富山駅前に至り、なんとか市営駐車場を見つけてそこに車を止める。これでようやく二本の足で立って歩ける。安定した地面の上で、自分の肩幅と足下だけ気にしていればそれでいいのだ。ペダルもハンドルも必要ない。なんて身軽なんだ。
 駅前の「支那銀」なる職人気質のラーメン屋で食事をとり、課長が電話で予約を取った1泊・素泊まり3500円の安宿に転がり込む。これでやっと寝られる。このときの安堵感といったら。この夜は、深く、十分に眠ることが出来た。

 道の駅で仮眠を試みる。だが、この炎天下の車内では、それは難しかった。

 やっと宿に到着して、一服。タバコはアメリカで買ったマルボロ青の100o。あんまりうまいタバコではないのだが、この一服は爽快であった。

 部屋に鍵すらついていない(内側から引っかける金具だけはある)この宿、冷房もまた、年代物である。作動しなかったが・・・。

 汚い足の裏で失礼。わかりにくいが、長いことアクセルを踏み続けた私の足。親指の股の皮が裂けて、剥がれている。


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■後年記■
 出発時から寝不足というひどい条件での旅行であった。運転に体調不良は大敵である。結果的に無事に帰り着き、擦った部位もキズにはなっていなかったが、一歩間違えたら何が起きていたかわからない。
 車を動かすときに、「寝不足だから、行くのを止めよう」という選択肢を取れることは少ない。たかが旅行と言えども、他者と行う、貴重な機会である。なればこそ、事前の体調管理と睡眠リズムの是正には気をつけねばなるまい。本当にこのときの体調不良は、思い出しても冷や汗が出る。


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