再び「桃源郷」へ
2001年12月15日(土)


 「桃源郷」とは何か、については、5月19日の手記を参照のこと。
 先日参謀長(仮名)宅に泊まった私は、今日半年ぶりにこの「桃源郷」へと行くこととした。
 道に迷ってなかなかたどり着けず、前回行ったのこ実は幻だったかと疑いたくなってきたが、なんとか達することができた。


 相変わらず、殺風景な団地である。
 団地一階の「商店街」と称するところでメシを調達したのだが、店のジイさんは奥で眠っていた。商品根こそぎ持って帰っても、わからないんじゃないだろうか。今回買ったのは、フライドポテトと握り飯5つ、ゆずまんじゅう、鶏の唐揚げ。いなり寿司。値段は覚えていないが、そこいらのスーパーの市価と比べると、半値程度だろう。ジイさんの趣味でやっていも店か。前回はバアさんがやっていたのだが、夫婦で交代して店番しているのか。
 材料は良質。腕も悪くない。冷めて冷えているのに、少しも味が落ちていない。ただ、老人が多いという場所柄、油と塩が抑えめなのを唯一の不満とすれば、なかな上等なメシであった。ベンチに座り、これらのメシとともに、くたびれた酒屋で買ったスタイニーボトルのビールをやる。


 公園・・・というか団地の広場には、ガキの一匹いなかった。土曜日の昼過ぎ、だれぞ遊んでいてもいいはずなのだが、すでにこの老朽団地では、若い家族はいないというのだろうか。
 メシを開けて喰らっていたら、どこからともなく鳩ばかり寄ってきおる。駅前なんぞと違って、鳩は心なしか痩せていたような。フライドポテトを1つ放り投げてやると、何話もの鳩がクチバシでポテトを引きちぎり、破片を飛び散らせながら貪り喰らいおった。あたかも、「スターシップトゥルーパーズ」で虫に食われる歩兵か、「エヴァ」の弐号機か。おそるべし。
 奴らが寄ってくるたびに、米粒やイモを放り投げて遠ざけていたが、奴ら、鶏の唐揚げまで食いやがる。鳥が鳥を喰うとは凄絶な。ヘタに餌付けなんぞしたら、こんどは自分の手を喰われそうだわい。まあ、チンパンジーもより小さな種類の猿を殺して喰らうし、わりと似た種類の生物も喰らい合うものだが。
 さらには、ビールをこぼしたその水たまりを鳩がついばみはじめたのには驚いた。酒好きな鳩とは恐れ入ったわい。なんか、心なしか、その鳩の足取りがおかしくなった気もしたが。


 食事を終えた後、しばらくこの団地を放浪した。 「桃源郷」は高地にある団地群である。外界から気分としては隔絶されており、侵入通路は少ない。この隔絶された時の流れの緩やかな空間、また訪れたい。


■後年記■
 あまりよろしくない表現が目立つが、私はこの老朽団地をとても愛おしく思っている。シャバとの雰囲気の違いを強調し、かつ面白く書こうとしたのであろう。ただ、後になって読み返すと、ちょっと引っかかる表現ではある。


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