海兵隊として生きる栄光、そして海兵隊として死ぬ栄光

(大学の後輩・課長の文章です)

 2回目見ると前と違ってなかなか感動ものでした。
 リーアーメイ扮する上級曹長とディナルドの対比が今回面白く感ぜられました。
 

リー・アーメイ→

何があろうが「海兵隊魂」を忘れない鉄人

ディナルド  →

典型的な海兵隊員のように見えるが実は息子(?)をなくしたショックのために海兵隊魂を見失いケダモノに成り下がった人間

 ディナルドはなかなか興味深い登場人物ですね。
 おそらく彼は撃たれるまで自分を立派な海兵隊員と思い続けていたのでしょう。


 彼は間違いなく息子(?)を失ったショックで変わった。
 敵に対する異常なまでの憎しみ。
 憎しみで戦っていたのでしょう。
 だが、その憎しみが「海兵隊員としての自分」を客観視する事を妨害したと私は思います。だから、捕虜を拷問して看護婦に「ケダモノ」といわれて驚き、ブチ切れたのでしょう。
「俺はケダモノではなく立派な海兵隊員だ」
 そう考えたのでしょう。


 しかし、彼は潰された村で奇跡的に生き残ったガキ「ピーウィー」に救いを求めた!
 それが彼の致命的弱さであった。
 冒頭で「扱いにくい男」と彼を表現したリー・アーメイは、彼が優秀な海兵隊員だが、兵隊として致命的な弱さを持っていることを言いたかったのであろう。


 大量のベトコンに包囲され危機的な状況が続く中、彼の弱さが露呈しはじめてきた。
「(ベトコンは)ディナルドの守る東側にねらいを変えた 攻撃力はあるが守りは堅くなかった」
 そして、生きるか死ぬかの大勝負の前日の夜、ついにディナルドは自分の弱さをリーアーメイに告白する。
 「絶望したんだ。地獄だったんだ」と。
 ジミーの死を乗り越えられなかったディナルド・・・。リーアーメイは彼に失望すると共に、致命的な精神の弱さを持つ彼の行く末を予感したのかもしれない。


 予想された通りに、彼はここ一番という大切な場面でピーウィーを助けようとし、ベトコンに撃たれる。ベトコンに弱さを突かれたのだ。結局、彼は弱者と言うことになるのでしょう。もちろん戦争では弱者は生き残れない。簡単な戦争のルール。


 そして衝撃のラスト・・・。
 撃たれて初めて気づく、栄光の海兵隊員とかけ離れた、かろうじて生きている惨めな自分自身。
「海兵隊員は死ぬために存在する(フルメタルジャケットより)」
 ディナルドは言った、「撃ってくれ」。
 リーアーメイは愛する部下に生きていて欲しいと思いつつも、せめて最後だけでも海兵隊らしくさせたいと悩んだに違いない。だが、彼は鉄人、ディナルドに海兵隊員としての死を与えてあげた。殺す方が辛いに違いない(リーアーメイの顔の皺がそれを十分に物語っている)。
「・・・一番デブでブスな娼婦を買ってたっけな」
 おそらくディナルドが心の傷を負う前の、優秀な海兵隊員同士の楽しい思い出に違いない。その言葉にディナルドは救われた。栄光たる海兵隊の、黄金の思い出と共に誇りを持って死ぬことができたに違いない。


 地獄の軍団スクワットは人間ドラマとしても最高です。
 ほんと泣けました。
 久々にいい映画を見ました。


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