キャラクター設定 (五十音順)
 
【藍群清人】(あいぐんきよひと)
「群衆」に登場した人物。群衆達の上に彼らの考えていることを漫画の「吹き出し」の様な形で見る事が出来、また、その吹き出しに手を加えた上で、特定の人物の上に「落とし」て、その人物を間接的に操ることが可能だった。
 その能力故か、自らを「特別な存在」であると考え、連続放火事件を起こしていたが、迷流の策によって、群衆達の力で制裁を受けた。

【愛鈴】(あいりん)
「吸血石」で登場した、中華女性。人の「感情」を宝石の形で取り出すことが出来る。他にも何かの能力を持っていそうだが、詳しくは不明。
 怪盗魔韻羅銘の助手を務め、魔韻のことを心配している様子だが、彼女自身の目的については謎が多い。
 謎だらけの中華美女である。

【天津虎奈手】(あまつこなた)
「完全な私の為に」で登場した人物。羽馬谷仁美のクラスメイト。男勝りできっぷのいい性格。名前が設定されている以上、再登場が考えられるキャラの一人。

【荒木文七】(あらきぶんしち)
「裸の王様」で登場した県警の巡査部長。髪は短く厳つい顔をしている。
 犯人が鳥目男ではなく屋敷の内部にいると言うことにいち早く気づき、尚芳にくってかかる。
 迷流に頼まれて美鈴の捜査に協力した。顔に似合わず優しくて面倒見がよい。

【葉・ロイフォード】(いえ・ろいふぉーど)
「盗作者」に登場した、新進気鋭の作家。躍動感溢れる描写に人気がある。
 イギリンの湖水地方の出身で、父親は中華から来た外交官。
 花田土門の依頼を受けた迷流達が、盗作疑惑を解明するために杜谷に住む彼のもとを訪れるが、葉も花田に同様の盗作疑惑を抱いていた。
 事件の解決後は、その花田と合作し、合作ペンネーム『花葉田土呂井』としてデビューを果たす。

【石田】(いしだ) 
「強聴者」に登場した人物。丹沢静音の隣の部屋に住んでいた。幼少時の体験から、どのように小さな音でも聞くことが出来る能力を得た。強聴者。
 静音の部屋に五月蠅いと怒鳴り込むのを、一種の趣味にしていたようだが、迷流によって、新しい、落ち着くことが出来る住処を提供されることになった。

【井野崎】(いのさき)
「完全な私の為に」で登場した、羽馬谷家の執事。主人には忠実そのもので、仁美は自分の孫のように可愛がっていたらしい。執事としても真面目で優秀だが、少々お喋りな所があるようだ。

【鶉森清輝】(うずらもりきよてる)
「裸の王様」でその名前が出てくる、鶉森唐花の父親。生前は縁澤家の主治医をしながら、新薬の開発研究に没頭していた。その際、中華の研究期間とも何らかの関わりを持っていたらしい。
 元々は縁澤美咲の婚約者だったが、尚芳に美咲を奪われたと言われている。が、実際のところは研究ばかりしている清輝に美咲が愛想を尽かしたといった様子。実際、清輝は女性には対して興味を持っていなかった模様。
 数年前、縁澤家の実験室で自分の体を滅多刺しにして死んでいるところを発見される。その顔には悦楽の表情が浮かんでいたという。

【鶉森隆文】(うずらもりたかふみ)
「鳥目男の犯罪」で初登場、以後「裸の王様」にも登場した人物。鶉森芳香の娘で、縁澤乃舞華の弟。線の細い美青年で、少し長い髪の毛をヘアクリームで纏めている。
 縁澤咲耶とは恋愛関係にあったようだが、咲耶は「鳥目男」事件で命を落とす。その後暫くは彼の顔から憂愁の消えることはないのであろう。

【鶉森唐花】(うずらもりとうか)
「鳥目男の犯罪」で初登場、その後「裸の王様」にも登場した人物。鶉森清輝の息子で、彼の死後も使用人として縁澤家に雇われていた。
 盲目であることを他人に知らしめすために、常に目の上に黒い布を巻き付けていたが、実際のところ、彼は、生きている人間だけはどうやっても見ることが適わないと言う中途半端な透視者だった。この能力はどうやら鶉森清輝の人体実験によってもたらされた物らしい。
 縁澤咲耶の死後、彼女の復讐の意味も込めてか、次々と殺人を犯すも、最後は館に火を放ち運命をともにした。それによって影葵の伝説は終わりを迎えた。数年前、影白虎がそうであったように。

【鶉森芳香】(うずらもりよしか)
「鳥目男の犯罪」及び「裸の王様」に登場した人物。鶉森隆文と縁澤乃舞華の母親。
 病気の為、普段から車椅子の生活を余儀なくされている。かつては、「御館様」、縁澤蒼紫と同じ病室にいたこともある。その為か、尚芳に対しては偏見を持っている。
 縁澤家の火災の際、逃げ遅れて死亡したと見られている。

【宇多川華恵】(うだがわはなえ)
「完全な私の為に」で登場した、羽馬谷仁美のクラスメート。みんなには華ちゃんと呼ばれている。のんびりやさんで、少し夢見がちなところがある。

【宇都宮瑞穂】(うつのみやみずほ)
「伝えて、マイハート」で登場した人物。少し細目の目に、すっと通った鼻筋が印象的な知性的な美人。槍下冷夢とは、高校時代の同級生。後に恋人同士となる。かなりのインテリで、女だてらに、冷夢と同じ東都大学に進学したエリイト。
 大学卒業後は、貴知久出版に勤め、文芸雑誌「ミュゼ」の編集に携わっていた。
 冷夢とは結婚まで秒読みの段階に入っていたが、仕事で大迫への出張中に汽車の事故にあって、脳死状態となる。冷夢の手でこっそりと「槍下医院」に運ばれて延命措置を受けていたが・・・。

【鵜堂小町】(うどうこまち)
「舞踏病」に登場した女性。霧深い山奥の洋館で、子供達の世話をしながら暮らしていた。白い肌に、黒くつやつやと輝く髪、そして金色に輝く瞳を持った不思議な美人。性格は甲斐甲斐しくつくすタイプ。しかしその正体は蜘蛛の化身だった。
 館を訪れた鏑木のことを好きになり、彼の子供を宿すが、その悲しい習性上、出産の前に鏑木を食べてしまう。

【鵜堂多楽】(うどうたらく)
「舞踏病」に登場した少年。髪の毛は坊ちゃん刈りで、小町と同じ金色の目を持つ。小町は実の母親で、多楽自身も蜘蛛の化身である。少しぶっきらぼうな性格。鏑木のことは気に入ってたらしい。

【鵜堂由良】(うどうゆら)
「舞踏病」に登場した少女。髪の毛はお下げにしていて、やはり小町と同じ金色の目を持つ。多楽の姉(?)であり、小町の実の娘。やはり蜘蛛の化身。
 小町によく似た美少女だが、性格は少しこまっしゃくれていて、多楽に比べると少し大人びている。

【枝川三歩】(えだがわさんぽ)
「盗作者」でちらりとその名前が出てくる人物。日本のミステリイの草分けになったと言われる人物でベテランの人気作家。
 主な代表作は『人間臼』、『雲鵠星』、『熊男』、『天井裏の軟派者』等々。

【縁澤喜美子】(えにしざわきみこ)
「鳥目男の犯罪」、「裸の王様」に登場した人物。縁澤尚芳の後妻で、彼との間に尚樹をもうける。元々は尚芳の会社の部下の一人だったらしい。
 和服の似合う日本的な美人だが、何を考えているのか今一つ解りがたいところがある。
 尚樹を失ってからは魂が抜けたようになってしまった。

【縁澤咲間】(えにしざわさくま)
「鳥目男の犯罪」で登場し、「裸の王様」にも登場した人物。縁澤尚芳と美咲の間に生まれた長男。咲耶の実の兄、尚樹とは腹違い。
 子供の頃から体が弱かったためか、やせぎすで顔色が悪い。権力には執着が無く、長男だと言うことを重荷に感じていたようだ。
「裸の王様」事件で殺され、結果として当主の地位からは逃れられることになった。皮肉な結果である。

【縁澤咲耶】(えにしざわさくや)
「鳥目男の犯罪」で登場した人物。事件の依頼人。
 縁澤尚芳の長女に当たり、咲間の妹。普段は東都の緑果にあるお嬢様学校に通うために、家を出て寮での寄宿生活を送っていた。
 幼さの中に凛とした強さを秘めた美少女、髪の毛は腰まで伸ばした見事な黒髪で、前髪は目の上で一直線に切り揃えている。
 本来的には明るい、と言うか結構お転婆な性格だったらしい。五つ地蔵の首がもぎ取られた事件で、尚芳の言う因習に反発し、小さい頃自分を助けてくれた「鳥目男」こと、鳥巣の無実を晴らしてくれるように迷流に依頼する。
 しかし、彼女が信じたその鳥目男によって命を奪われることになる。
 彼女の死が、縁澤家の崩壊を決定づけたと言っても過言ではないだろう。

【縁澤蒼紫】(えにしざわそうし)
「裸の王様」で登場(?)した、縁澤家の先代当主。通称『御館様』。
 美咲と結婚した尚芳に当主の位を譲ってからは、暫くの間隠棲していたが、やがて、惚けによる奇行が目立つようになり、尚芳の手によって屋根裏部屋に幽閉されていた。
 やがて、老衰で死亡するが、尚芳は今なお村人達に対して多大なる影響力を持つ彼の死を隠蔽した。
 死んだ後も、幽霊となって唐花に指示を与えていた(?)とされるが定かではない。

【縁澤尚樹】(えにしざわなおき)
「鳥目男の犯罪」、「裸の王様」に登場した人物。縁澤尚芳と喜美子の間の子供。咲耶と咲間の異母弟。
 尚芳は尚樹を自分の後がまに、と思っていたようだが、「裸の王様」事件で殺される。

【縁澤尚芳】(えにしざわなおよし)
「鳥目男の犯罪」で初登場し、「裸の王様」にも登場した人物。縁澤家の現当主。
 縁澤家に婿入りする形で当主の座についたため、村人、特に老人達の間では余り評判が芳しくなかった。
 自分の地位を確たる物にするため、積極的に村に同化しようとはしていたらしいが、その事によって新たな因習を作り上げてしまった。
 家の中では厳格な当主を演じ続けていたが、其の実、彼は孤独だったのかも知れない。
 全てを失った後で、彼は漸く何かに気がついた。

【縁澤乃舞華】(えにしざわのぶか)
「鳥目男の犯罪」、「裸の王様」に登場した人物。鶉森芳香の娘で、縁澤咲間の妻。
 派手好きで、常に分厚く化粧をし、それに負けないぐらいの格好をしている。母親似でどちらかというと能面のような表情の持ち主なのだが、心の奥では野心を秘めている。
 権力に対して興味のない夫、咲間にはもどかしい想いを抱いていた。
「裸の王様」事件で夫共々刺殺される。

【縁澤美咲】(えにしざわみさき)
 縁澤尚芳の先妻で、蒼紫の一人娘。咲間、咲耶兄妹の実の母親。「鳥目男の犯罪」や「裸の王様」でその名前が出てくる。
 元々は鶉森清輝の婚約者だったが、研究ばかりにのめり込み構ってくれない彼に愛想を尽かしていた頃、当時蒼紫の会社の部下だった尚芳からのアタックをうけ、結婚に至る。従って、実はこの二人は恋愛結婚である。
 しかし、咲耶がまだ幼い時分に病死した。

【還山霧華】(かえりやまきりか)
「鳥目男の犯罪」、「裸の王様」に登場した人物。還山為助の孫で、縁澤家の看護婦を勤める。清輝の生前は彼の助手のような存在。尚芳が縁澤家の党首に就任したときに、祖父の為助共々縁澤家に迎え入れられた。
 スッキリとしたショオトカットの美人。だが、鶉森芳香に言わせると、『淫蕩看護婦』とのことで、実際咲間や隆文にモーションをかけていたらしい。
 病床の迷流と既成事実を持とうとするも、背後から刺し殺された。

【還山為助】(かえりやまためすけ)
「鳥目男の犯罪」で初登場、「裸の王様」にも登場した人物。縁澤家の使用人だが、実は尚芳の父親。
 事業で失敗して隠棲していたところを尚芳によって使用人として迎え入れられる。尚芳の真意はどうあれ、為助は感謝していたらしい。

【加治木京介】(かじききょうすけ)
「吸血石」に置いて名前だけが登場した人物。春日辺稚芙美に怪盗魔韻羅銘に会うための暗号を教えた。魔韻ともどうやら面識があるらしい。

【春日辺稚芙美】(かすがべちふみ)
「吸血石」で登場した人物。怪盗魔韻羅銘に、母の形見である「吸血石」を盗み出してほしい、と依頼をした。
 依頼は無事成就されたが、母の死にまつわる恐ろしい真相も、彼女は知ることとなった。しかし、愛鈴の手によって、「悲しみ」を奪われた彼女は、もう泣くことがない。

【春日辺幹彦】(かすがべみきひこ)
「吸血石」で登場した人物。稚芙美の両親が死んだ後、その財産を乗っ取りのし上がった人物。でっぷりと太って、頭は禿げ上がっている。弁は立つらしい。

【兼元和重】(かねもとかずしげ)
 歴史上の人物。「盗作者」の中で、花葉田土呂井による『樫の宮の姫君』の中にその姿が見える。
 戦国時代に羽里那の地を治めていた松嵜氏の家臣で、松嵜清秀の悪政に心を痛め、その子供である清嗣を支持し、生涯にかけて忠誠を誓ったと言われる。

【鏑木史彦】(かぶらぎふみひこ)
「物臭男の犯罪」に登場した人物。恋人(と思い込んでいる)榊原綾女の行方を探して欲しい、と、中山警部に依頼をした。色白で、のっぺりとした顔。ただし、貿易関係の会社に勤めており、金回りはよい。何かショックを受けると、すぐに気絶する癖がある。
 物語の最後に登場したときは、”何処にでも行くことが出来る能力”を身につけており、警察で保管していた榊原綾女の死体を盗んだり、投獄されていた亀之譲を喰い殺したりした。
 その後、「舞踏病」で再登場。榊原綾女の一件以来、愛した相手を「食べる」事でしか自分の愛情を満足させることが出来なくなっていたが、小町に出会ったことで、「相手に必要とされること」を欲していたことに気づき、正常な愛情を取り戻す。
 が、皮肉なことに、そう気づかせてくれた小町によって喰われることになるが、本人はそれでも救われたらしい。

【果梨菜】(かりな)
メイドの少女。魔韻が子供の頃、魔韻の家に仕えていたらしい。
 魔韻に冷たく当たる周囲の中で、ただ一人魔韻の味方をしてくれていたらしいが・・・。

【神崎】(かんざき)
「鈴の音は魔の調べ」で登場した、「度目樹コンサアトホール」の支配人。礼儀正しい紳士。

【清洲川水穂】(きよすがわみずほ)
「伝えて、マイハート」に登場した人物。生まれつき心臓に欠陥を持っており、「槍下医院」に入院していた少女。父親は会社の社長をしている。この病気は、有効な治療法が無く、延命措置を行うためだけに水穂は入院していた。
 入院生活が長い所為か、抜けるように白い肌。髪の毛は日本人にしては色素が薄い茶色。無邪気で屈託が無く、可愛らしい。
 両親が通り魔に殺されたことを聞いたショックで、病状が悪化したが、冷夢が宇都宮瑞穂の心臓を移植したことで一命を取り留める。そして・・・

【桐ヶ谷翼】(きりがやつばさ)
「完全な私の為に」で、その名前だけがでてくる人物。従兄弟のお兄さんとセックスした(?)、と女学校をその噂で持ちきりにする。

【霧山昴】(きりやますばる)
「完全な私の為に」で登場した、羽馬谷仁美のクラスメートの一人。大変にお喋りな上に耳年増で、女学校の噂の殆どは彼女が発信源とも言われる。

【阪上洞親】(さかがみほらちか(どうしん))
 歴史上の人物。「盗作者」の中で花葉田土呂井による『樫の宮の姫君』の中にその姿を見出せる。
 戦国時代の松嵜氏の家臣。清嗣によるクーデターに乗じて民草を煽り、自ら覇権を奪おうとするも、扇動していた筈の民草によって命を奪われたと言われている。

【榊原綾女】(さかきばらあやめ)
「物臭男の犯罪」に登場した人物。亀之譲の財産をねらって、彼に取り入ろうとするも、彼の秘書であった津島と相打ちになって死亡する。死後、亀之譲によって、遺体はバラバラにされ、亀之譲と鏑木の腹の中に収まった。

【向坂尚斗】(さきさかなおと)
「伝えて、マイハート」で、清洲川氏の遺産についての説明のために、冷夢の元を訪れた弁護士。角張った顔をしている。

【佐藤剛尚】(さとうたけひさ)
「追跡者」で初登場した人物。中山警部の部下の刑事で、階級は巡査。連続通り魔に刺されるも、幸いにして一命は取り留める。警視庁による柔道大会では、見事優勝を飾る程の猛者。
「鈴の音は魔の調べ」で、無事退院して職場復帰。極端に無口な性格。

【里中明良】(さとなかあきら)
「物臭男の犯罪」で初登場した人物。中山警部の部下の刑事で、階級は巡査。語尾に、ですぅ〜という言葉を付けたがる、頼りない若者。
「群衆」でも登場して、迷流に捜査に協力してもらう。普段はハンチングを被っており、センスのいい服装と、甘いマスクから、実は女性には結構もてるらしい。

【佐乃】(さの)
「鳥目男の犯罪」に登場した老人。鳥目男の本来の役割について迷流達に語った。

【山楽湿地】(さんらくしめじ)
「盗作者」でその名前だけが出てくる人物。花田土門や、葉・ロイフォードなどと並び称される新進気鋭の若手作家。
 主な代表作に『黒い光』、『冬枯れの丘で』、『聞かずとも』等々。

【汐原】(しおばら)
 東都大警察の警部。中山警部とも面識がある。殺人課の彼とは違い、盗難事件などを主に担当しているため、怪盗魔韻羅銘と対決することが多い。
 愛妻家らしく、煙草も妻に言われて止めようと努力している最中。野次馬男とも面識がある。下の名前は募集中。

【シャルル・モッテンバーニ】(しゃるる・もってんばーに)
 世界的なシャンソン歌手。本名はシャルロット。「鈴の音は魔の調べ」で来日し、コンサアトを開くが、その最中に事件に巻き込まれる。
 過去、人買いの手で誘拐された経験があり、昔のことで覚えているのはシャルロットという名前だけ。その後、神父様に救われ、修道院で過ごすが、そこでは自らが持つ能力のために少女の命を奪ってしまうことになる。
 彼女の歌う歌は、総て過去への郷愁と贖罪に満ちている。

【薄野深舞香】(すすきのみぶか)
「追跡者」に登場した人物。地味な感じのする職業婦人。殺しても殺しても蘇る、追跡者に悩まされるが、それは彼女の妄想にすぎず、実際は、彼女こそが、連続通り魔事件の犯人であったことが判明した。
 投獄された後、元恋人であった看守を刺し殺して、自分も死んでいるところを発見される。その際に、押収した筈の出刃が、彼女の胸に突き立っていた。

【篁初臣】(たかむらはつおみ)
「伝えて、マイハート」で初登場した東都病院の院長。上品な服装をした老紳士。誠実な性格のようで、医学界への女性の進出にも寛容な態度で臨む。その際に、医学を志そうと考えている清洲川水穂の存在を知り、自分に身寄りのないことも手伝って、養女に迎えようとする。
 結果、槍下冷夢という天才外科医の跡取りまで出来てしまった。

【篁(槍下)ミズホ】(たかむら(やりもと)みずほ)
「伝えて、マイハート」で登場した人物。本人曰く、清洲川水穂の体に宇都宮瑞穂の心臓を移植したことによって、二人の記憶と人格が合体して出来た人物(らしい)。清洲川水穂の若さや無邪気さと、宇都宮瑞穂の記憶を併せ持つ彼女は、槍下冷夢のことが大好きで、篁初臣が訪れた際のごたごたに乗じて、冷夢と結婚の約束を交わした。

【タバコ屋のおばちゃん】(たばこやのおばちゃん)
「密航者」で登場した人物。タバコ屋に身をやつした情報屋。おばちゃんの姿も仮の姿に過ぎない。
 藍歳と喧嘩して家出してきた藍花を預かっていた。藍花とはその昔からの知り合いだという。中華語に堪能で、正体不明。ただ、藍花は「カジさん」と呼んでいたが・・。

【青流】(ちんりう)
「密航者」で登場した人物。美鈴を運んできた船に乗っていた。
 その航海中に、性交媒介者である美鈴を抱いたことで、「水蛇」(シュイシー)の能力に目覚めた。同僚の花燃に比べると、直情径行的なところがあることは否めない。
 青い中華服を着ているのは、自らの名前によるものだろうか?

【津島】(つしま)
「物臭男の犯罪」に登場した人物。亀之譲の秘書を、永年勤め上げる。彼の遺産が目当てだったらしいが、秘書としては、優秀。榊原綾女と相打ちになって死亡。死後、彼女と同様に、亀之譲によってその遺体を解体された。

【鳥巣】(とりす)
「鳥目男の犯罪」で登場した人物、鳥目男。
 大きく顔の両側に分かれた目と、鳥の嘴のような大きな口を持つ。
 本来は影葵一帯を守護していた神。村人達の代わりに厄を引き受け、その厄をはるか天高くへと運んでいくことから、鳥に具象される。
 しかし、尚芳の手によって『ヨソモノ』の烙印を押されたことによって、何時しかその役割を見失い、零落する。
 その結果、昼の間は優しい「鳥巣」、夜の間は荒ぶる「鳥目男」の二つの顔を持つようになり、五つ地蔵の首をもぎ取ったり、子供を神隠しに遭わせたりするようになった。
 現在行方不明。

【ドナ】(どな)
 「鈴の音は魔の調べ」で登場した、スチュアートの妹。シャルルがビブラートによって硝子を割ってしまったために、凍死した。

【中山義之輔】(なかやまよしのすけ)
「追跡者」で初登場した、東都大警察の警部。迷流とは旧知の仲らしく、よく迷流の探偵事務所に”真っ当ではない”事件を相談するために訪れる。美鈴には、「ヨッシー」と呼ばれて親しまれている。
 丁寧にセットされた頭髪、同様に綺麗に整えられた口髭を生やしており、上品な紳士と言った印象がある。紙巻き煙草を好んで吸っている。

【丹沢静音】(にさわしずね)
「強聴者」事件の依頼人。隣の部屋に住む石田に、怒鳴り込まれた上に、自分の行動を逐一言い当てられて恐怖を覚える。実は、財閥、露倉家の娘で、親によって決められた人生に嫌気がさし、家を飛び出して銀行勤めをしている。それでも親は、結局援助してくれているらしく、静音も、少しは心を開きかけている模様。
 事件の解決後、洋菓子店「ヴェルローゼス」のショートケーキを持って事務所を訪れ、迷流に、愛の告白まがいのことをしている。
「完全な私の為に」で、父である露倉屑葉と、迷流藍歳による粋な(?)計らいによって、羽馬谷良澄の葬式の席で再登場を果たす。
 羽馬谷氏の変死の原因の調査を迷流に頼むが、その結果信じられない事実が浮かび上がった。しかし、その後のどさくさで迷流とのデートの約束を取り付けている辺り、意外と要領がいいのかもしれない。
 さて、そのデートである筈のシャルル・モッテンバーニのコンサアトでも事件に巻き込まれてしまうが、総てが解決した後、美鈴を恋のライバルとして改めて認識したらしい。

【花田土門】(はなだどもん)
 「盗作者」に登場し、奇妙な盗作事件の解明を迷流に依頼した人物。「花葉田土呂井」の片割れ。
 幻想的で胡乱な描写に定評がある彼は、外見はおっとりとした青書生風。目がやたらと細く笑うと一本の線になってしまう。
 事件後、葉・ロイフォードと意気投合し、「花葉田土呂井」のペンネームで合作を開始する。

【花葉田土呂井】(はなはだとろい)
 小説家。「盗作者」事件を迷流が解決したことによって生まれた、花田土門と葉・ロイフォードによる合作ユニット。現在、「歎異抄」に、「ヴィッテンヘルムのソーセージ」という作品を連載している。迷流には不評だが、美鈴には好評を博している様子。

【羽馬谷楓】(はまだにかえで)
「完全な私の為に」で名前だけが登場した、良澄の妻で、仁美の母親。良澄との性交渉後に腹上死を遂げる。その現場を仁美が目撃していたのがそもそもの事件の発端となった。

【羽馬谷柘希】(はまだにつき)
「完全な私の為に」で登場した羽馬谷良澄の母親。嫁である楓のことが気に喰わず、孫の仁美共々辛く当たる。若い頃はさぞかし美人であったろう事を彷彿とさせる、気品のある老婆ではある。

【羽馬谷仁美】(はまだにひとみ)
「完全な私の為に」で登場した人物。変死した羽馬谷良澄の娘。緩くウエーブのかかった黒髪と、大きな黒い瞳が白い肌に映える美少女。
 幼い頃に両親の性交渉の現場を目撃してしまい、果ては、その次の日に母親が腹上死してしまった結果、自分の中に言いしれぬ欠落感を覚えるようになる。
 その後、セックスの意味を曲解した結果、父親である良澄氏を衰弱死させることになった。その際に妊娠し、十ヶ月後に男の子を出産した。

【羽馬谷良澄】(はまだによしずみ)
「完全な私の為に」で死亡した人物。海外からの自動車の輸入によって財をなした「羽馬谷グループ」の総裁。妻の楓を亡くした後は、一人娘の仁美を溺愛していた。
 しかしその仁美によって、精気を搾り取られて殺されてしまうことになる。

【原元高明】(はらもとたかあき)
「群衆」で登場した、松尾町の事件の放火犯人。藍群に操られて放火を行い、良心の呵責に耐えきれずに自首した。

【碑嘉神】(ひかがみ)
 かつて槍下冷夢が大学にいたときに師事していた医学博士の名前。篁初臣の同級生。
「伝えて、マイハート」において、その名前だけが語られる。篁の言葉によると、「残念なこと」になっているらしい。

【花燃】(ふぁらん)
「密航者」で登場した人物。青流同様、美鈴を運んできた船に乗っていた。
 青流に比べると、やや冷静な性格。本編では見ることが出来なかったが、「火龍」(フォロン)という能力の使い手。
 赤い中華服を着込んでいるのはやはり名前のイメージだろうか。

【フィリップ】(ふぃりっぷ)
「鈴の音は魔の調べ」で登場した、シャルル・モッテンバーニのプロデューサー。
 フィリップというのは偽名で、本名はスチュアート。シャルルの能力によって、妹を亡くし、一時は彼女のことを恨んでいたものの、彼女の不幸な境遇を知った後で、改心し、正体を隠したままプロデュース業に精を出し、婚約までこぎ着けた。
 しかし、スチュアート名義の脅迫状が届いたことから事態は急変した。

【渕上賢蔵】(ふちがみけんぞう)
「群衆」で登場した、「東都日日新聞」の、三面のデスク。野次馬男の上司に当たる。恰幅が良く、常ににこやか。野次の話に依れば「理解ある」上司。

【黄老師】(ほぁんらおすー)
 青流や花燃に命令を与えていた謎の道士(タオシー)。藍花が人生初の「ノベリング」で垣間見た老人がこの人物に相当すると考えられる。
 日本の人間の持つ「想」の能力に注目し、怪しげな計画を練っていたらしい。美鈴はその計画の囮として送り込まれた。
 その真の目的は謎のままである。

【魔韻羅銘】(まいんらめい)
「吸血石」で初登場した、東都を騒がす大怪盗。自分の気に入ったものや、依頼のあったものしか盗まないと言う。
 白子(アルビノ)で、髪は白く、瞳は赤い。その容姿故に、幼い頃は家族や村の人から虐待を受けていたと思われる。
 助手の愛鈴と組んで、依頼人からは感情を宝石の形にして受け取る。その目的は謎。
 人の記憶を部分的にリセットする能力を有しており、それと様々な秘密道具を用いて、鮮やかに盗みを行う。しかし、どうもそれは自分に過剰な試練を与えているように、愛鈴には見えるらしく、彼女を心配させている。

【松乙真三郎】(まつおつしんざぶろう)
「盗作者」でその名前が見える、ベテラン作家。
『耽美主義』の巨匠で、彼が文学界に与えた影響は底知れない。
 代表作に、『芸夢の時間』、『屋根裏の白背』、『青梅咲く庭で』等々。

【松嵜清嗣】(まつざききよつぐ)
 歴史上の人物。「盗作者」中の花葉田土呂井の作品、『樫の宮の姫君』の中にその名前を見出せる。
 戦国時代に羽里那の地を治めていた松嵜家の跡取り息子。父、清秀の悪政に反発し、クーデターを起こすも、家臣の阪上の計略にはまり、国を追われた。
 しかし、後の時代には領国を取り戻し、時の将軍から関東管領に任命されるまでになった。

【松嵜清秀】(まつざききよひで)
 歴史上の人物。「盗作者」中の花葉田土呂井の作品、『樫の宮の姫君』の中にその名前を見出せる。
 戦国時代に羽里那の地を治めていた戦国大名だが、自身は酒と女におぼれ、民衆を省みなかったことから、息子である清嗣によって命を奪われた。

【松嵜日夜】(まつざきひよ)
 歴史上の人物。「盗作者」中の花葉田土呂井の作品、『樫の宮の姫君』の中にその名前を見出せる。
 松嵜清秀も後妻の連れ子で、清嗣とは血の繋がりはない。大きな樫の木がある『樫の宮』に普段は住んでいた。母親は京の都出身で日夜は貴族の血を引いている。
 清嗣によるクーデターの際に、あわや民衆に殺されそうになるも、どうにか脱出し、後には清嗣の正室となった。

【三上】(みかみ)
「鈴の音は魔の調べ」で登場した通訳の女性。銀縁の眼鏡を掛けた知性的な顔立ち。

【美鈴】(めいりん)
 迷流藍花の助手を務める中華娘。
 どう言った経緯で迷流の助手になったかは、「密航者」で明らかにされたとおりである。
実は人の持つ「想」の能力を引き出す媒介者であり、初めは性交することによってしかその能力を使うことの出来ない性交媒介者だったが、迷流と出会ったことによって、意思媒介者としての能力が芽生えた(らしい)。従って、迷流の能力も、美鈴によってもたらされたものである。
 明るい性格で、料理が得意。日本語は妙な文法で喋り、読むことは苦手。年齢は、15,6歳と思われる。迷流のことが大好きで、世話女房のような口を利く。当シリーズのヒロイン的キャラクター。
「完全な私の為に」で、本人が語った所によると、彼女は、迷流と出会う前の記憶がほとんどないらしい。そのお陰で、現在も明るく生きていけているのであろう。
 しかし、「鈴の音は魔の調べ」では自分とよく似たシャルルの境遇を聞いて、少しナーバスになっていた。

【迷流華隠】(めいるかいん)
 迷流藍花の弟で、迷流藍歳の次男。家を出奔した藍花に代わって、迷流財閥の総裁に就任した。兄とは仲が良く、頼まれたら厭とは言えない性格。
「密航者」では間接的に藍花の命を救ったとも言える。兄思いの優しい性格は、財閥の総裁としては少々問題があるのかも知れない。

【迷流葉月夜】(めいるはづきよ)
 藍花の異母兄弟の一人。「完全な私の為に」で、その名前だけが登場する。
「密航者」で漸く本人が登場する。藍花に対してはあまりよい感情を抱いていないようにも見えるが、果たして・・・。

【迷流美須瑠】(めいるみする)
 藍花の異母兄妹の一人。やはり「完全な私の為に」で、その名前だけが登場する。
「密航者」で本人初登場。葉月夜以上につかみにくい性格をしているような気がする。

【迷流藍花】(めいるらんか)
 当シリーズの主人公。”ノベリング”と言う、一種のサイコメトリング能力を用いて様々な事件を解決する、東都の名探偵。とある雑居ビルに探偵事務所を構え、住み込みの助手である美鈴と二人で暮らしている。
 実は、迷流藍歳の長男で、財閥の跡取りであったのだが、親に反発して出奔。やがて探偵業を始める。その反発の原因は、母親が死んでからの藍歳の行動にあるらしい?
「その猟奇、読み解きましょう。」と言う決め台詞と共に現れ、様々な事件を解決へと導く。・・・が、普段は美鈴が居ないと朝起きることもできないほどの、生活不適応者。
「密航者」でその能力の由来が明らかになる。その能力を授けてくれた美鈴の事は、恋人と言うよりは可愛い妹としてみているように見えるが、果たして?

【迷流藍歳】(めいるらんさい)
 迷流財閥前総裁で、現会長をつとめる人物。藍花と華隠の父親に当たる人物でもある。性豪として知られ、毎日のように色町を徘徊し、二人以外にも正妻妾を問わず、多くの子供が居る。
 家を飛び出した藍花に対し、最初は腹を立てていたものの、後に藍花が探偵を開業し、華隠に総裁の継承権を譲ったことで和解し、今では、藍花の探偵ぶりを面白がっているらしい。
 なんだかんだ言っても、藍花の探偵開業を助けたのはこの人物である。
「完全な私の為に」で本編初登場、露倉屑葉と組んで、藍花と静音のデートのお膳立てをした。

【山谷真名片】(やまやまなひら)
 歴史上の人物。「盗作者」中の花葉田土呂井の作品、『樫の宮の姫君』の中にその名前を見出せる。
 松嵜家に代々仕えてきた老臣。清秀の横暴目に余り、清嗣とともにクーデターを起こそうとするが、事前にそれを察知した阪上の手によって命を奪われる。

【槍下冷夢】(やりもとれいむ) 
 東都病院の外科医。「追跡者」の事件で入院した、佐藤刑事の担当医。長身で、精悍な風貌をした美男子。お見舞いに訪れた中山警部や、迷流達の相手をつとめた。後に、一人で訪れた迷流と、意味深な会話を交わす。
 その会話が真に意味していた所は、「伝えて、マイハート」で明らかになった通りである。篁ミズホと婚約している。

【野次馬男】(やじうまお)
「群衆」で初登場した、「東都日日新聞」の事件記者。自称、「完全熱血事件記者」。
 事件が起きる前にそれを察知する能力の持ち主だが本人は気づいていない。背が低く、常に耳には赤鉛筆が挿されている。迷流も何回か取材を受けた経験があり、ひとたび話し始めると、なかなか終わらない。言葉の終わりに、何故か「はい」を多用する癖がある。
「群衆」事件では、新聞社を利用して、迷流に事件の解決を依頼した。
 その後、「吸血石」事件では空を飛ぶ魔韻の姿をカメラに収めて、一面を飾った。

【吉崎英樹】(よしざきひでき)
「物臭男の犯罪」で初登場した、警察の監察医をつとめる人物。普段は、個人病院を経営している。縁なしの眼鏡をかけて言葉の語尾に、「ね」を多用する人なつっこい話し方をする。
 死体の解剖が好きなようで、榊原綾女と津島の死体を、「見事なバラバラ死体」と形容している。中山警部とは、周知の間柄のようで、仲がよい。
「完全な私の為に」では、衰弱死した羽馬谷良澄氏の解剖を行った。

【万屋亀之譲】(よろずやかめのじょう)
「物臭男の犯罪」に登場した人物。万屋グループの元総裁。現在は隠棲の身で、警察署にほど近い邸宅に、秘書の津島と二人で暮らしていた。幼少時より、外に出ることが嫌いで、旅行中に家族を列車事故で失ってからは、ますますその傾向が強まって、「物臭男」の異名で呼ばれるようになる。
 榊原綾女と、津島の死体を解体して、死体損壊の罪で服役中に、突然現れた鏑木によって噛み殺された。

【リベイラ】(りべいら)
 シャルル・モッテンバーニのマネエジャーをしていた人物。正体はヨハネス。スチュアートに成り代わってシャルルを脅迫しようとしていたが、本物のスチュアートであるフィリップの手によって殺された。

【露倉屑葉】(ろぐらくずは)
丹沢静音の父親、「完全な私の為に」で、迷流と静音を再会させる為に計略を用いた。

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