2002/09/21 公開
担当:カルネアデス

ADAM THE ETERNAL FACTOR

#02 Ver.α


 
☆モニカ=セレッティ

日本‥‥か、もう来る事は無いと思っていたのに‥‥な。

エルディアの土以外を踏むのは久しぶりだ。

アメリカと同じで舗装されてしまっている足場。

大地の温もりを感じられない道を土と呼んでいいものか。
いつから私は自然女になったんだ?

タクシーを使う気にはなれなかったので
エルディア大使館までの道のりは自らの足の赴くままとなった。
日本で見る夕陽は、高層建造物のお蔭であまり眼に止まらなかった。

 
第一印象は異臭だった。とても大使館にあるまじき匂いだ。

FBI時代にも経験した事の無い圧倒的な臭みが館内に漂っていた。
これは‥‥血だな。照明も落ちている。異状事態ということだな。

足を踏み出すと所々で水飛沫が上がった。照明が無いからなぁ。
これだけ広範囲に水をまいたという事は無いだろうから‥‥血か。

床が覆われるほどの血か。気を引き締めないとな。

 
エルディア大使館は異臭に包まれていた。

冷静さを欠いてはいけない。
私は生きて帰らなければならないんだ。
たとえ、どんな事をしようとも私は‥‥。

?!

館内と言う広い空間で息遣いがまるで聴こえないと思ったのだが、
今聴こえなかったか?

‥‥この惨状を引き起こした本人か、生き残りだろうか。

ぴたり。

「動かないで貰おうか」

な、首筋にナイフを当てられた?!

「あいにくと、目が不自由なものでね。」

「それこそうっかり‥‥っと首を落としてしまうかもしれない」

「なぜ、一思いにやらない」

「趣味と言うものもある」

「理解、できんな」

「理解? 君らにそんな芸当が出来るのかな」

「さぁ‥‥ね!」

モニカはナイフを跳ね除けた。思いの他簡単にナイフから逃れられた。

モニカは背後に向けてエルボーを出すが手ごたえが無い事を確認すると、
続けて前回り受身で回避運動をした。

距離を取ったモニカが振り向くが人影を感じられない。
暗闇がさらにそれを困難とさせていた。

「私はただ、羽を休めていただけだよ」

「‥‥‥‥」

「目が利かないこの状況で、遊ぶのは楽しくないからねぇ」

モニカはこれだけの機動力で、どこが不自由なんだと毒づいた。

「その不自然な態勢、持っているのだろう。拳銃を。抜かないのかね」

‥‥本当に見えていないのか?

「殆ど見えないというほうが理解、しやすいかね?」

‥‥なるほど、おしゃべりがすぎたな。ヤッパリ背後を好むのか!!

「そこだ!」

「ちぃ、おしゃべりがすぎたか」

モニカは振り向きざまに銃を抜き発砲した。

 
「ふふ、まだ迷いがあるようだな」

無茶苦茶言うな、この視界で当てろと言う方が無理がある。

「私を殺す気が在るのかね? 正当防衛だぞ?」

‥‥はずれたな。

「私を殺すか、捕まえるか」

「こう、銃口にさらしておいても発砲をしない。それの理由だと思うがねぇ」

「興ざめだ。任務とか命令とか」

「自分の行動に責任をもてない奴を見ているのがぁ、一番反吐が出る」

「見逃してやる、とっとと尻尾を巻いて逃げるがいい」

「‥‥それは、出来ない」

「そうかい、では。私の方が退いてやろう」

 
負けた、何なんだあいつは。なぜあんなのがに日本に来ている。
トップクラスの殺人鬼じゃないのか?

‥‥大使館役員に刃物が刺さっている。凶器はこれか。

被害者は刃物傷を負ったものがほとんどか。
これではまるで‥‥テラーの所業じゃないか。



‥‥テラー? まさか、あいつは‥‥。

プリーチャーか?!

 



☆甲野三郎

「来ていたのかね」

「ああ」

僕はモニカ君に呼び出された。昔のよしみというヤツかねぇ。
ロストワンの時「だけ」だけど。

警察より僕を頼ってくれたのは嬉しいやら哀しいやら‥‥。

「本部から、別部署へ電話が飛んだときには驚いたよ」

「‥‥ふむ」

「なにかあったのか、 Mr. 甲野」

「キミと、彼女と。それに彼か。偶然にしては何かと‥‥」

「どうした?」

「いやぁ、なんでもないよぉ」

 
「‥‥で、何でボクが呼ばれるわけ?」

「見知った人間が欲しかった。もう、捜索畑からはご無沙汰なモノでね」

「そうかい」

「何にも聴かないんだな」

「面倒はごめんだよぉ」

「そうかい、つまらない奴だな」

 
「で」

「‥‥ああ、凶器はこれだな」

「‥‥‥‥」

「どうした?」

「‥‥はぁ、またかい」

プリーチャーかな、この殺り方。この趣味。相変わらずエゲツ無いねぇ。

「僕はただのツナギだからねぇ。あとは本職さんにおまかせ‥‥なのだが。キミはどうするのかね?」

「ふむ、どうしようか」

「良かったら僕と一緒にくるかい?」

ギロリ!

「そ、そんな顔しなさんな。何もとって喰おうってんじゃないよぉ。僕も帰る所、無くなっちゃって」

「なに?」

「ここだけの話しさぁ‥‥ちょっといいかな」

僕は今までのあらましを適当にモニカの耳に小声で囁いた。

「内調もね、やられちゃったのよ。多分‥‥同じヤツに」

「‥‥なんだと?」

「そんなこんなで、今は他部署にお世話になってんのよねぇ。
そこに移動しないかね。ここじゃァなんも話せないでしょ?」

「‥‥わかった」

 
と言う事でモニカ君をエスコートして岐路についている。
普通に帰るだけじゃつまらないからねぇ。

情報交換もしてしまおう、そういう魂胆だよ。

「‥‥そうか」

「で、出来たらキミのネタもご披露して欲しい訳なのだが‥‥どうかね」

「‥‥そうだな」

「無論、オフレコにしておくよ」

「‥‥お心遣い、感謝しておこう」

 
「将軍ねぇ、みょうな名前だね」

「ふむ‥‥」

「エルディアは結構、日本びいきなのかね」

「さあな、ただ」

「ただ?」

「旧体制下では欧州ではなく、極東部の才能を評価していたのは確かだ」

「‥‥東洋三幹部か」

「そうだ。アレのお蔭で、結果的に我が国は前進できた」

「良くも悪くも」

「‥‥そうだ」

「‥‥‥‥すまん、言いすぎだった」

「かまわんよ、歴史だ」



「将軍‥‥か、目星は付いているのかね」

「ある」

「そうなのかい?」

「死んでいた」

「なんだって?!」

「大使館で死んでいたよ」

「‥‥どういうことだ」

「私が訊きたいぐらいだよ」



「意気込んで来てみたら。いきなりお亡くなりモードだ」

「これからどうすればいいのやら、正直参ったよ」

「だから‥‥」

「そう。Mr. に電話を入れた」

「プリシア女王には?」

「していない。館内の直通電話も何もかもが使用不能になっていたからな」

「そうかい」



「プリシア様は‥‥」

「うーん、何となく考えている事はわからなくも無いが。それは無いだろう。
コンナ事態まで先読みできるのだったらそれはもう‥‥」

「そうだな、どうかしている‥‥」

「気疲れしてんじゃないのかねぇ。キミぃ」

「将軍を確保せよ! と言ったらしいが本当は息抜きさせたかったんじゃないのかねぇ」

「まぁ、お偉方の考える事はわからんよぉ」

「‥‥その意見については同感だな、ははは」




「お楽しみ‥‥か」

「‥‥なんだ?」

「いや、少し迷っていてねぇ」

「なにを」

「いやぁ、ねぇ。ある人物にあったんだよ」

「どこかへ行ってしまったと思っていた人物が」

「何を言いたいのかが判らないのだが、Mr.」

「死んだと思っていた人間が生きていたんだ」

「ほほぉ、それは興味深いな」

「イマイチ、その、接し方と言うのがだ‥‥ねぇ」

「確かに困るだろうな」

「だが、ケースバイケースだろう」

「‥‥ヤッパリこの話はナシにしよう」

「‥‥Mr. このサイだ。隠し事はナシといこう」

「キミねぇ‥‥やけに話すね」

「Mr. は口が堅い」

「軽かったら?」



「あとで殺す」

「冗談でもそりゃ無いよぉ?」

「半分冗談だ」

「半分本気でしょ?」

「半分だけさ」

「その半分がコワイねぇ」

「女は恐いものだぞ、Mr.」



「正直なターゲットが消えて参っているよ。
エルディアにいた頃は、雑談と言えば国の行く末の事ばかりだった。
部下に自分の素性を話すのは正直に‥‥な、判るだろう甲野」



「‥‥そうだねぇ」

「たから、ただの独り言だ」

「いい、息抜きになりそうだねぇ」

「息抜き?」

「プリシア女王はこういう息抜きをさせたかったのかもしれないな、と思ってねぇ」

「他国の人間には内部情報も愚痴れると言う事か?」

「そこまでは言っていないが。他国に興味が無い人間になら問題ない無いようだと思う。
エルディア内じゃコンナ話、聞き耳が恐くて出来ないだろ?」

「‥‥してない」
 

to be continued ... ?


後書き

 カルネアデスです。全然まとまらないので公開しておきます。
二週間ほど放置状態だったのですがまったくもって進みませんので
これで公開しろって意味なのかなとも思わなくないです。

 三部から文字に色つけてみましたが、
科白以外に色つけるのは見たこと無かったのでやってみたのですけど
ブギーさんがやっておられましたねぇ。

 色考えるの面倒です。そのうち消滅するでしょう。
キャスト表見ただけでもうどれだけ決めないとだめなのやらデスから(笑)

 ヤッパリ一回に書く量は自分が校正できる範疇超えたら進まないものかも。
書きすぎたなぁと思っていたら全然進みませんし (^^;


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