‥‥女は眠りについた、安らかな寝顔だ。 この人のこんな顔は見たことがなかった。 「看護婦さん、ちょっと確認させてもらうわよ」
いつからそこに居たのか、そしていつ距離を詰めたのか
そのときになって俺は、 寝ている女は寝ると同時に手を離したのか、そこには無かった。 「‥‥違うわよ、これ」 「あ‥‥」 そう女性に指摘され、血の気が引いていく看護婦。 「張り込み早々‥‥やってくれるわね」
女性は看護婦の手から点滴の針を引っ手繰(たく)り、 「哀しくなっちゃうわね‥‥ねぇ、そう思わない?」
応える義理は無いのだが、 口には出していないはずなのに、女の口元が軽く綻(ほころ)んだ。 |
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