2001/09/09 公開
担当:カルネアデス

ADAM THE SPIRAL FACTOR

#27 Ver.α


 ここの部長さんは松乃君を助手として隣の部屋に閉じこもった。
チラッと覗いたけど、アレは下手な病院より良い器材を
揃えているのかもしれない。

 器材の良し悪しは判らないが、ボクの勘はそう言ってのけた。
昔取った「剃刀の甲野」の本能がそうさせたのかもしれないねぇ。

 今部屋に居るのは、ボクと佐久間君と氷室君と桐野君と江国君と
記憶喪失の子と‥‥あと弥生君だね、氷室君の話だと。

 ここの部長と松乃君と天城君は隣だし。



甲野三郎「へぇ‥‥すごい器材だねぇ」

 初めて立ち入った教育監視機構本部の内装に心底感心する甲野。

佐久間裕一「‥‥部長の趣味ですよ、ただの」

 灯の入っていない煙草を咥えながら、ボッキラボウに佐久間が言い放つ。

甲野三郎「‥‥ここの組織は趣味が通るのかい?」

佐久間裕一「俺が来たときからこうでしたよ」

甲野三郎「そうかね」

 佐久間は煙草で氷室恭子、江国雄二、桐野杏子を指し示す。
その三人は桂木弥生を介抱に手一杯でこちらの話は蚊帳の外であった。

佐久間裕一「あの三人以外は、なぁぜか医療に
携わっている奴ばっかりだったんですよ」

 窓に歩み寄った甲野を横目に、佐久間が煙草を咥えながら続ける。

佐久間裕一「そんな訳で、宝の持ち腐れって事も無かったっスよ」

 灯の無い煙草を咥えたので語尾がおかしくなってしまった佐久間は
そのまま椅子に思いっきりもたれ、天井を仰いだ。

甲野三郎「‥‥‥‥」

 かしゃん。

 窓に掛かったブラインドに手を突っ込み、
外の様子を窺(うかが)う甲野の目に陽が差した。

甲野三郎「‥‥止んだか」

 かしゃん。

 甲野はブラインドを放し、瞼から鼻筋に掛けて、さする。
眩しかったようだ‥‥目尻に微かな涙が浮かぶ。


to be continued ... ?


感想等々は掲示板メールまでお願いします。
感想やご意見は書き手の力の源です!


ASF #26 - ASF #27 - ASF #28

戻る