ADAM THE SPIRAL FACTOR

　‥‥やっぱりボクのクシャミなんだろうか。
桐野君が振り向き「いや〜ん」と言った表情で見ている。

　どんな風になっているのは判っているよ。
緊張を持続させた後と言うのは思いっきりたるむね。

甲野三郎「さっくまくん、無いかね？」

　佐久間君は先ほどの格好のまま、天井を仰ぎながら
灯の点いていない煙草を咥えていた。

佐久間裕一「‥‥へいへい」

　やる気なさそうな気の抜けた返事をすると、隅っこの方から
タオルを大量に取り出し、みんなに向かって投げ始めた。

甲野三郎「雨に濡れてた事をすっかり忘れていたよ」

　佐久間君はヤケクソ気味にタオルを投げつづけていたが、
投げ返されたタオルを顔に受け、動きが止まった。

佐久間裕一「‥‥‥‥」

桐野杏子「てへっ」

佐久間裕一「き・り・の・ぉ・ぉ・ぉ・ぉ」

　顔に張り付いたタオルをはがそうとした瞬間、
佐久間君の背後から爆音が発生した！

　じりりりりぃぃん！！　じりりりりぃぃん！！

佐久間裕一「‥‥‥‥」

桐野杏子「‥‥‥‥」

　じりりりりぃぃん！！　じりりりりぃぃん！！

佐久間裕一「‥‥‥‥」

桐野杏子「‥‥‥‥」

甲野三郎「‥‥佐久間君」

　じりりりりぃぃん！！　じりりりりぃぃん！！

桐野杏子「さっくまさんｩ」

佐久間裕一「‥‥桐野君、命拾いしたねぇ。覚えてろよ」

　がちゃり。

　そして、部屋は静寂を取り戻した。刹那的な静寂を‥‥。