1999/02/02 公開
担当:カルネアデス


機動戦艦ナデシコ

これから (仮称)


#03 『艦長』


一人の女の子が大通り沿いに走っている。
その女の子はこの辺りでは有名だった。
その走りも普通ではなかったが、誰も女の子には興味を示さなかった。


そう、その事はあまりにも日常的なことだったからだ。


ユキナは念の為に隣町まで全力疾走していた。
公園に着いたユキナはブランコに腰を落ち着かせた。

白鳥ユキナ「ミナトさんは……来ないわね。
                 インターハイの足にかなうわけないないわよね〜

ユキナの足はインターハイ選手に選ばれるほど優れていた。
上機嫌でブランコをこぐユキナ。

ふと思い出したように、コミュニケを作動させるユキナ。
ウインドが開きルリがうつしだされる。

白鳥ユキナ「あ、ルリちゃん。この前はどうも。」

ホシノ・ルリ「どうもです、ユキナさん。何か御用ですか?」

白鳥ユキナ「うん。 ごよう、御用なの。今度、遊園地に遊びにいかない?
                 ね、いいでしょ?」

ホシノ・ルリ「遊園地……ですか?」

白鳥ユキナ「そうそう、遊園地。あんた行ったことないでしょ?」

ホシノ・ルリ「はい、行ったことありません。別に断る理由がありません。それに……。」

白鳥ユキナ「それに?」

ホシノ・ルリ「火星の後継者事件の御褒美 (ごほうび) としてお休みがありますし、いいですよ。」

白鳥ユキナ「それはよかった。でね、ハーリー君も連れてきたら?」

ホシノ・ルリ「ハーリー君を?」

白鳥ユキナ「ルリちゃんが遊園地に行ったことないんなら、
                 ハーリー君も行ったことないんじゃないかと思ってぇ。」

ホシノ・ルリ「……わかりました。ハーリー君に聞いてみます。」

微笑 (ほほえ) むユキナ。

ホシノ・ルリ「ユキナさん? どうかしましたか?」

白鳥ユキナ「いや、こうやってお話しているとね、だいぶ感じがかわったかなぁと思って。」

一瞬躊躇 (ちゅうちょ) するルリ。
しかしすぐにいつものポーカーフェイスに戻る。

ホシノ・ルリ「そですか?」

白鳥ユキナ「うん、かわったよ。やっぱり艦長になったからかな?」

ルリの表情が沈む。

『しまった』 と思うユキナ。

しかし後の祭りだった。

白鳥ユキナ「……ごめん。」

ユキナの表情も沈む。

ホシノ・ルリ「ユキナさん、気にしないでください……それでは……。」

微笑んだルリの顔がウインドを占領したままウインドが閉じる。
その笑顔は明らかに無理して作られたもの……。
10人中10人が 『作り笑顔』 と言わせるほどのものだった。

白鳥ユキナ「……私の馬鹿……馬鹿……ば……か……

自分の頭に拳を振リ下ろす。

何度も何度も……。

公園の入り口にミナトの姿がある。
しかし、語りかける言葉が見つからないミナトは立ち尽くすしかなかった……。

ハルカ・ミナト「艦長か……。」

太陽はいつしか夕陽となり、二人を赤く染め上げていった。

to be continued ...


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