僕は見知らぬ――少なくとも敵のお嬢さんに、豪華な食事に招待されてしまった。 アクア・クリムゾン「さあ、私の愛しい王子様。早くお食べになって。」 テーブルの上には豪華な料理がならんでいる。 記憶喪失「は、はぁ……。」 取り合えず様子を見る為、目の前にあった肉まんを食べる事にした。 記憶喪失「それでは、いただきます……。」 敵の基地で何やってるんだか……。 アクア・クリムゾン「どう? 美味しい?」 満面の笑みで聞いてくるアクアさん。 記憶喪失「はっははは……。」 おいおい、なんなんだこの和(なご)みようは? 記憶喪失「…………。」 アクア・クリムゾン「…………。」 ひょい、ぱく。 記憶喪失「…………。」 アクア・クリムゾン「…………。」 僕は気が気ではない、当然だけどね……。 記憶喪失「…………。」 ひょい、ぱく。 アクア・クリムゾン「…………。」 そのせいか、言葉を発しない行動の裏返しに手が動き、食べ物を口に運ぶ。 記憶喪失「!?」 不意に視界がぼやける。首を振ってこの状態から立ち直ろうとする。 記憶喪失「あれ?」 アクア・クリムゾン「ふふふ。」 アクアの様子が先ほどと違うように感じ、自分の中に沸き上がる疑問が咽から這い出してきた。 記憶喪失「なっ、何を入れたんだ?」 アクア・クリムゾン「え? なにって、ナノマシンを活動を活性化させる薬が入っているのよ。」 僕は勢い良く立ち上がる……が、まっすぐ立っていられずにテーブルにもたれかかる。 記憶喪失「なっ、なんだって!?」 笑顔で言うお嬢、くそ油断大敵だ……ったな、今更ながら。 アクア・クリムゾン「ああっ、ごめんなさい。私の愛しい王子様。 でも、この悲劇を乗り越えてこそ幸せが……あら?」 アクアの目の前には誰も居なかった。 ただ、彼が居た周囲にはほのかに蒼い「なにか」が漂っていた。 僕はアクアから逃げ出した。 何やら、妄想にふけっていたらしく、追ってこない……らしい。 先ほど、勝手にジャンプしてしまった。 これが先ほどの……? でも、この状態では……いずれ捕まる。 ゴート・ホーリー「いざとなったら君だけでジャンプしたまえ。」不意にゴートさんの台詞が脳裏を走る。 まだ駄目だ、合図を出しただけで全く役に立っていない……。 それに、イツキやアキト……ユリカさんも……。 どんっ! 記憶喪失「!?」 曲がり角だったので誰かとぶつかった。この状況化だと敵しかいない! 言う事を聞かない身体は、条件反射的に銃を握り、対象目掛けて銃口を晒す……あれ? かちゃり……。 目の前に立っている男は、 木連服にネルガルシークレットサービス特有の(だと僕は思っている) サングラスを装備している。 男「……かかしか。陽動になっていないな。」 記憶喪失「か、かかし……?」 陽動と口に出した‥‥? もしかして味方? 男「私は燕、もう一人の囮という訳だ。」 ……囮? プロスペクター「出来たら連れていきたくないので、まぁ、我慢してください。」……もしかして、僕は居ても居なくてもいいようになっていたの? 燕「……何だ、飛び入りの囮だけあって、私の事は聞かされていないのか?」 僕は「こくっ」……と頷しかなかった。 燕「それはご愁傷様だな……そろそろ銃を下ろしてくれないかな?」 記憶喪失「あ、ああ……。」 燕「……っと、ちょっと借りる。」 銃を下ろそうとした途端、燕と名乗った男が僕の銃を持った手を掴み、引き金をひく。 ばぁぁぁん!! どさっ……。 燕さんの遥か後方……僕の正面で、僕の銃から吐き出された弾に身を晒したものが崩れる。 燕「どうやら、我々を油断させるために薄かったようだな。」 今、後を見なかったよな?この人……と、 先ほどの出来事で棒立ちになっていた僕を、燕さんが見つめている。 燕「……いつでもジャンプ出来るようにしているわけか?」 記憶喪失「は?」 燕「顔が光っているぞ、パターンがな。」 これがさっきの……。 記憶喪失「そういう訳では……ちょっと油断しまして。」 燕「……阿呆が。」 記憶喪失「…………。」 雑談をしていたので、いままで身を潜めていた敵さんに囲まれていた。 燕「……で、そのまま退くか?」 サングラス越しだけど、この状況を冷静に見つめているように見える燕さん。 記憶喪失「まさか、まだやれます。」 燕さんと背中合わせの位置に立ち、臨戦体勢をとる。 燕「仕方がないな、一緒に行動するか……お、おい!?」 僕を中心に光が広がっていく……。 またジャンプしてしまったらしい……。 燕「……おい、いきなりだな。」 記憶喪失「す、すいません……。」 燕「……油断の結果がこれか?」 記憶喪失「ええ、ナノマシンを活性化させる物質を盛られました。」 燕「盛られたってかかし……この状況化でよく食事なんか……。」 燕さんは呆れ顔……当然だろうな。次の瞬間、燕さんの目つきが変わる。 記憶喪失「燕さん?」 燕「一番会いたくないのに、会ってしまたようだな。」 燕さんの目線の先に視線をやる。 男「久しいな、ななし……。」 燕「!? かかしと面識があるのか!?」 男「誰かと思えば月臣……貴様も居たのか。」 記憶喪失「ほ……北辰!?」 僕達の目の前には、ルリちゃんに付いていった先の研究所で出会った男が居た。 北辰「ふふふ、楽しませてもらおう……か?」 燕が北辰めがけて飛び掛かる。 燕「おまえとあいつの関係は知らん!」 燕の右飛び蹴りを、右から左への動きをした左手で弾く北辰。 燕「……が、ここはまかせてもらおうか!!」 右足を流された反動で身体を捻り、左蹴りを操りだす燕に対し、 北辰は先ほどの左手の動きを利用して腰を捻り、左蹴りを操りだす。 互いの左蹴りは相殺する……ように見えた。 北辰「ぬん!!」 北辰の気合いのこもった声と共に、左足を地面めがけて振リ切った。 燕さんは壁めがけて吹っ飛ばされる。 燕「ちぃ!?」 素早く体勢を整え、勢いと威力を殺すため両手を地面についた刹那に一度跳ね、両足で着地する。 左足を振リ切ったため、後ろ向きになったまま、 北辰「ほう……やるようになったな。」 と言って、こちらに向き返る北辰。 |
あとがき こんにちは、カルネアデスです。 えっと‥‥だいぶサボってましたね (^^; まぁ他の事やって、放心状態(言い過ぎです)とかそういう状態だったので‥‥ ただの五月病だったのかもしてませんが‥‥(冷汗) 今回、書いたは良かったのですが、 どこで切ろうか迷ったのできりが良いところで切りました、 そうするとこんなに多くなってしまいました(笑) 初めのジャンプするところまでは昔書いてあって、それ以降は今回書いた分です。 ホントはここらで終わらしてぇ‥‥だったのですが、とんでもなく肥大しています(笑) 昨日また変な設定を創ってしまいました(冷汗) 第3部に予定していたものは、波瀬かすみさんのHP、ルリホに投稿してしまいました。 ただ Ruri-Mailer でのメールのやり取りで、 本編公開前にやっていた事の再現を、しただけだったのです‥‥。 詳しくはこちらの 2000/05/24 をご覧ください。 結局、公開方法が迷っていたので、これで良かったかと思っています。 あと、べるりん王国 の美鈴さんより戴いたCGを所々に飾りました。 ありがとうございます m(_ _)m |
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