1999/07/07 公開
1999/07/20 修正
担当:カルネアデス


機動戦艦ナデシコ

これから (仮称)


#SP 『お誕生日本の代わり(嘘)』


白鳥ユキナ「…………。」

ホシノ・ルリ「え?」

白鳥ユキナ「だから……。」

さっきより声が小さくなるユキナ。

ホシノ・ルリ「?? 顔が耳まで真っ赤ですよ、ユキナさん。」

白鳥ユキナ「!?」

ユキナの目が涙目になる。

ホシノ・ルリ「ユキナ……さん?」

ルリに肩をぶつけて走り出すユキナ。
しりもちをつくルリ。

ハルカ・ミナト「きゃっ……ユキナちゃん?」

どうやらミナトさんにもぶつかったらみたいです。
ミナトさんがこっちに来ました。

ハルカ・ミナト「何やってるの? ルリルリ?」

ホシノ・ルリ「……転んだだけです。」



ハルカ・ミナト「そっか、そういう事があったの……。」

ルリはさっきあったことの全てをミナトに話した。

ハルカ・ミナト「あの娘(こ)も強情だからねぇ〜。」

ルリのおでこを指で弾くミナト。

ハルカ・ミナト「きっと『友達になって』って言いたかったんでしょうね。」

『くすっ』と笑うミナト。

ホシノ・ルリ「……。」

私もこんなふうに笑えるのかしら?



白鳥ユキナ「こんなことならお兄ちゃんなんていなけりゃよかった……。」

丁度、ユキナの部屋を通りすぎる時にそんな場面に出くわしてしまったルリ。

ホシノ・ルリ「…………。」

ベットにつっぷしているユキナ。
ルリはユキナを黙って見ている。

ホシノ・ルリ「ユキナさん……。」

その声に反応して振り返るユキナ。

白鳥ユキナ「何よあんた!」

刺のある言い方ですが、目が赤いようです。
声をかけたのは……まずかったかも知れません。

ホシノ・ルリ「月並みですが、元気出してください。」

白鳥ユキナ「五月蝿(うるさ)いわね、あっち行きなさいよ!」

ホシノ・ルリ「…………。」

ただ押し黙るルリ。

白鳥ユキナ「なによ……あんたのそういう所、大っ嫌いなのよ!」

ユキナは目の前にあった鞄をルリに投げつけた。

ホシノ・ルリ「ユキナさん……。」



ハルカ・ミナト「あの娘(こ)の方がもっと悲しいに決まっているわ。」

ホシノ・ルリ「え?」

ハルカ・ミナト「私より立ち直りが早いと思われてるかも知れないけどね……。」



鞄はルリにとどく前に地面に落下した。

白鳥ユキナ「あんたにねぇ、私の気持ちなんかわからないわよ!!」

ホシノ・ルリ「…………。」

白鳥ユキナ「唯一の……唯一の 『絆』 が無くなっちゃったのよ!」



プロスペクター「どうですか? ルリさんは……。」

ハルカ・ミナト「……だめね。」

プロスペクター「そうですか……。」

ハルカ・ミナト「無理もないわ……同時に二つも 『絆』 を失っちゃったんだから……。」

ベッドの上で蹲(うずくま)っているルリ。



ハルカ・ミナト「あの娘(こ)はね……不器用なの……。」

記憶喪失「はぁ……でも大抵の人は不器用ですよね? 僕もですけど。」

ハルカ・ミナト「…………。」

記憶喪失「…………。」

ハルカ・ミナト「ま、そうだけどね……。」

記憶喪失「すいません、横やり入れちゃって……。」



ホシノ・ルリ「出会いがあれば必ず別れもやってきます。」

白鳥ユキナ「…………。」

ホシノ・ルリ「私には確実に 『絆』 と呼べるものは 『ナデシコ』 しかありません 。」

白鳥ユキナ「え?」

ホシノ・ルリ「私には何もなかったから……。」

白鳥ユキナ「…………。」

ホシノ・ルリ「戦争が終われば 『ナデシコ』 という 『絆』 がなくなってしまいます。」

白鳥ユキナ「…………。」

ホシノ・ルリ「でも…… 『ナデシコ』 で勝ち取ったこの 『絆』 は、
                  離ればなれになっても、失われないはずです。」

白鳥ユキナ「もういいわ……。」

ホシノ・ルリ「…………。」

部屋を出ていくルリ。

白鳥ユキナ「その……ありがとう……。」

その言葉に振り返るルリ。
私もこんなふうに笑えるのかしら?
おもいっきり笑ってみた。
ユキナの表情(かお)がほころぶ。



その日から、私達は本当の友達になった。



白鳥ユキナ「つかつかつか。」

ハルカ・ミナト「ユキナちゃん……。」

ルリの前に立つユキナ。

白鳥ユキナ「あんたねぇ! いつまでそうやってる気!!」

ハルカ・ミナト「ちょ、ユキナちゃん!?」

白鳥ユキナ「昔私に言った事忘れたわけじゃないでしょうねぇ!!」

ホシノ・ルリ「……。」

ミナトの肩に手をかけるプロスペクター。

プロスペクター「まあここは一つ、彼女にまかせましょう。」

ハルカ・ミナト「…………。」

白鳥ユキナ「『『絆』 は、離ればなれになっても、失われない。』 んでしょ!」

ホシノ・ルリ「…………。」

白鳥ユキナ「それとも、口から出任せだったの! そうだとしたら私は……
                 それを信じた私はただの『バカ』じゃないの!!!」

ホシノ・ルリ「…………。」

白鳥ユキナ「あんたなんかねぇ、いつまでもそうやっていればいいのよ……。」

持ってきた花をルリに投げつけるユキナ。
そのままの勢いで扉を開け、ルリに背中を向けたまま立ち止まる。

白鳥ユキナ「あんたの事、見損なったわ!! あんたなんか絶好よ!!!!!」

そして、扉の前からいなくなった。

プロスペクター「…………。」

ハルカ・ミナト「…………。」

ホシノ・ルリ「…………。」

その空間は沈黙に支配された。



ハルカ・ミナト「この花は……。」

ピンクの花と白い花と赤い花、1種の枝から白と黄色の花を咲かせる4種の花が束ねられている。

プロスペクター「ドレドレ……これはナデシコの花ですな。それと……違う色を付ける花……ですか?」

ホシノ・ルリ「…………。」

プロスペクター「確か、 ナデシコの『花言葉』 は…………。」





『キーンコーンン カーンコーン〜』

白鳥ユキナ「じゃっ、またねぇ〜。」

生徒「おう、また明日。」

白鳥ユキナ「うん。」

走り出したユキナだったが校門にある人影を見、足を止める。

その手の中には黄色い花が束ねられている。



土手に座る二人。
すぐ目の前には小川が流れている。

ホシノ・ルリ「…………。」

白鳥ユキナ「…………。」

『チョロチョロチョロ……』

自分の持ってきた花を見つめながら話し出すルリ。

ホシノ・ルリ「……花には 『花言葉』 というのがあるそうですね。」

白鳥ユキナ「そうよ。」

ぶっきらぼうに話すユキナ。

ホシノ・ルリ「撫子(なでしこ)、花園衝羽根空木(はなぞのつくばねうつぎ)、
                  突抜忍冬 (つきぬきにんどう)、吸葛(すいかずら)……
                  ユキナさん、わざわざ探してきてくれたんでしょ。」

白鳥ユキナ「ぁ……。」

自分の持っていった花の名前を全部言われて驚くユキナ。

ホシノ・ルリ「花の数だけ言葉がある……私の、今の私の気持ちは……。」

白鳥ユキナ「…………。」

その 『花言葉』 を言いそうになるのを止めるユキナ。
ルリがユキナに花を差し出す。
その花束には黄色い花と白い花を付けた2種の花が咲いている。

ホシノ・ルリ「 『感謝』 です。 ご迷惑をおかけしました。」

白鳥ユキナ「…気にしてないわよ。」

ルリから花を奪うように受け取るユキナ。

ホシノ・ルリ「それであの…………。」

なかなか言葉が出ないのか俯(うつむ)いてしまうルリ。
『はぁ〜』 と間を置いてから話し出すユキナ。

白鳥ユキナ「あれは……あんたがあまりにも情けなかったから言っただけよ。 本気じゃないわよ。」

ルリの顔を覗き込むような形で話すユキナ。

ホシノ・ルリ「……よかった。」

嬉しそうに微笑(ほほえ)むルリ。
照れ隠しからか頬をかくユキナ。

白鳥ユキナ「これから暇? 久しぶりに何か食べに行かない?」

ホシノ・ルリ「そうですね、行きましょうか。」

白鳥ユキナ「それじゃぁ、行こ!」

ユキナが微笑んでいる。
ルリもまけじと微笑んだ。

白鳥ユキナ「あんたのその笑顔がまた見れて嬉しいわ。」

ホシノ・ルリ「ユキナさん…………。」

そう、ここにも 『絆』 があった……。



ホシノ・ルリ「 『花言葉』 ?」

プロスペクター「そう 『花言葉』 です。」

ハルカ・ミナト「 『花言葉』 とは、その花が持つ印象にふさわしい言葉を付けたもののことよ。」

プロスペクター「まぁ、いろいろ調べてみると面白いですけどね。」





ハルカ・ミナト「あら? どうしたの、そのお花?」

白鳥ユキナ「ルリちゃんに貰(もら)ったの。」

ハルカ・ミナト「金水引(きんみずひき) と 霞草(かすみそう) ね。」

白鳥ユキナ「まさかその言葉を言われるとは思ってなかったんだけどね。」

ハルカ・ミナト「そう、あの子がんばってたから……。」

白鳥ユキナ「えっ?」

ハルカ・ミナト「オモイカネを、使わないで調べてたわよ、あの娘(こ)……。」

白鳥ユキナ「そう……なの?」

ハルカ・ミナト「ユキナちゃんといっしょだね。」

白鳥ユキナ「あれ? ばれてた?」

信じられないという顔するユキナ。

ハルカ・ミナト「ごめんね、見ちゃったのよ、調べている所……。」



ハルカ・ミナト「……と言うことがあったのよ。」

記憶喪失「へぇ。」

ハルカ・ミナト「あ、もうこんな時間。」

記憶喪失「え? ああ、もう看板の時間ですね。」

ボイラーの灯を落とす記憶喪失。
ミナトが食器をまとめながら、

ハルカ・ミナト「ねぇ、記憶喪失君。 今回私達、どうすればいいのかしらね?」

食器の洗いながら返答する記憶喪失。

記憶喪失「今回ってマキビ君のことですよね。」

ハルカ・ミナト「そう……よ。」

椅子をまとめるミナト。

記憶喪失「さて……ね。 どうしましょうか。」

to be continued ...


今回の作品について

これは元々裏設定に回してしまったものです。
というか本編にくっついていたのを排除したのですが(笑)
今回ホシノ・ルリの誕生日本代わりといってはなんですが加筆し、公開することにしました(笑)
尚、今付いてる名前は仮のもの……と言うことで。

1999/07/20 修正個所
『白鳥ユキナ「煩(うるさ)いわね』を
『白鳥ユキナ「五月蝿(うるさ)いわね』に変更。


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