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1997-06-14
takes011
メドゥーサ
◎太陽系外第2期調査船「ビーグルIII世号」報告書No.79より転載
○生息惑星
アルゴル(ペルセウス座β)第2惑星ゴルゴニア
○惑星環境
アルゴルは2.876日周期で明るさの変わる変光星(四重連星)だが、第2惑星は中心から離れた巨大惑星で、変動する太陽光線の影響から厚いガスの大気によって守られている。
ガス雲の蓄熱効果によって地表は比較的安定した環境であり、多様な生物圏が100あまりの大陸に広がっている。
ゴルゴニアの表面積は地球の40倍強で大陸の大きさの平均はユーラシアに匹敵する。
○支配生物
ゴルゴニアス・メドゥーシス
○名  前
メドゥーサ ※「メドゥーサ」は我々が命名した種族名で、個人を識別する「名前」に相当するものはない。
○性  別
両性具有
○美の基準
電磁波発生膜の大きさ、色つや、電磁波自体の強さ、波形の美しさ。
○生  態
ゴルゴニア生物圏の食物連鎖最上位に位置する支配種族である。

メドゥーサ属だけがもつ特徴は頭部両側に大きく張り出す膜で、常に微弱な電磁波を発している。

敵または捕食対象に出会うと特殊な波形の電磁波を大出力で発し相手を確実に死にいたらしめる。
電磁波が致命的な効果を持つのはゴルゴニアの生物がかなり電子的な進化をしているためと思われる。

殺害された生物は表面が石のように硬化し、メドゥーサは死骸に巻き付いて内部の液化した養分を吸い上げる。
透明なセミの抜け殻のような死体を見かけたらメドゥーサに捕食されたものである。

メドゥーサ属は事実上無敵だが、生息数は確認されたもので70に満たない。非常になわばり意識が強い種族であり、1個体のテリトリーは発する電磁波によって主張され、一つの大陸をおおうほど広い。
○生殖形態
メドゥーサ属は通常の時期は孤独に生活し個体同士が接触することはまれで、出会えば必ず殺しあうが、繁殖期だけが例外である。
繁殖期は300年に一度程度で、仮説だが四重連星の特別な位置関係の周期と一致しているのではないかと推測され、現在確認中である。

繁殖期には両性具有であるメドゥーサの胸部にある1対の雄性生殖器が牙状に突出して顕著になり、根元の精嚢は乳房状に膨張する。
雌性生殖器はやはり1対が腹部下方にあるが変化は見られない。
各個体はこの状態になると惑星の北極地方を目指し移動を開始する。

移動途中で個体同士が出会うと交尾する。
交尾姿勢は両個体が腹面を対向させ頭部を逆位置にして行う。
交尾は1時間近く続き、その間無防備のようであるが、痙攣的に強力なシータ波を発するので近づくのは非常に危険である。

両者100前後の受精卵を受胎するが、交尾終了直後必ず殺し合い、勝った個体は負けた個体を通常の獲物と同じように摂食する。
ただし受精卵だけは消化器ではなく子宮に相当する部分に取り込み保存する。

北上を続ける間トーナメントのように交尾殺戮を繰り返すので、北極に到達するのは2、3個体に過ぎない。
この時点で体が硬化して動かなくなる。約3ヶ月経過後母体は破裂して、他個体から摂取した受精卵も含め6千から1万の幼体が孵化する。

幼体はすみやかに惑星全土に拡散し小さなテリトリーを確保する。
成長するにしたがってテリトリーも広がるため、重複した他個体とは「決闘」が行われる。
前述の安定した個体数まで減少するのに要する期間は5〜7年程度とみられ、その後は次の繁殖期まで個体同士の接触は一切ない。
○進化上の考察
上記の特徴的繁殖形態は、全ての受精卵が孵化するため自然淘汰が働かず一見進化上無意味なようであるが、受精卵全体に含まれる遺伝子の割合はトーナメントの上位勝者のものほど幾何級数的に増大する上、敗者の遺伝子もゼロにならない点、進化上不都合とは言えない。
これはメドゥーサ属が強力すぎて天敵も存在せず、種内競争しかないため遺伝子がかたよりすぎる弊害を是正するため発達した仕組みと思われる。
○補  遺
メドゥーサの調査記録に当たっては2名の乗員が犠牲になった。
ジャーヴィー生物調査官及びセレンスキー2等航海士。
ここに両人の冥福を祈る。

2397年06月14日 主席生物調査官ゲリー・カーライル4世記述

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