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07/05/30(水) 殯の森
07/05/27(日) スパイダーマン3
07/05/16(水) 水森亜土展
07/05/05(土) 横溝映画
07/05/04(金) 大正シック展
07/04/29(日) 芝桜の丘
07/04/22(日) 夢百景:角栄&有働
07/04/15(日) 乱菊物語
07/04/08(日) My Life In The Database.
07/04/01(日) 「夢の古代文明紀行」の立花隆

2007/05/30(水)殯の森

NHK-BSハイビジョン『(もがり)の森』(監督脚本・河瀬直美)を見る。

田園の中の老人ホームの日常から始まる。科白を日常音に溶けこませるドキュメンタリーのようなタッチ。

茶畠の緑が鮮烈な映像が美しい。最初は妙に説明的なセリフが多いわりに説明不足な感じがして、大丈夫かいなと不安になりながら見ていたのだが、杞憂でした。

後半、登場人物が初老の男と若い女性介護士の二人に絞られると、にわかに画面が緊張し、感情のほとばしり以外の科白はなくなっていく。

男は妻を、女は子供を、それぞれ失った二人が心を再生する物語、と言えば陳腐だけど、ほとんど科白にたよらず二人の肉体的行動と森の映像だけで、ああ二人は再生したんだなあと思わせるラストに持っていく。前半の科白や出来事の数々が伏線としてそこにたどりつく。うまいもんです。

二人が彷徨する山中が不気味なほど美しい。

森の中の深い木陰と木洩れ陽のコントラストを撮るのはすごく難しいと思うのだが、この映画での森の光りの美しさは黒澤明の『羅生門』の薮の中の木洩れ陽に匹敵とすると思う。

二人で盗んだ西瓜を食べさせっこしたり、夜の森の闇の中の二人を焚き火の赫い光りだけで浮かび上がらせたり、官能的なシーンも結構ある。どれもラストにつながるのが、官能性を更に増している。

たっぷりと満腹感はあるが、どうも隠されてる仕掛けがまだありそうな気がして、ひさしぶりにまた見たい気にさせられる映画でありました。

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出演俳優について

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もちろん、今年のカンヌ映画祭のグランプリ作品。これから単館上映するというのに、TV放映してしまっていいのだろうか。見れば私のようにもう一度見たくなるという自信があるのだろうか。

2007/05/27(日)スパイダーマン3

MOVIX亀有で『スパイダーマン3』を見る。

まあ、好きなシリーズだし、本作も面白いのだが、少々詰込みすぎ。大作になりすぎたのかもしれないが、3人も悪役をいっぺんに出すことはないだろう。

SFアクション映画にしては、人間的なドラマがよく描けているところが好きだったのだが、そこが稀薄になってしまった。悪役は一人にしぼって人間関係をじっくり撮ってほしかった。

「ヒロイン ぶさいく」でググると「スパイダーマン」が一番ヒットするらしいが、MJ役のキルスティン・ダンスト、たしかに美人ではないが、演技はうまいしチャーミングだと思うけどなあ。ブロードウエイのスターはたしかに似合わないが、売れないクラブ歌手役はぴったりだ(ほめている)。冒頭の蜘蛛の網の上でのデートシーンの笑顔は美人でした。

ヒロインの恋敵役は私の好きなブライス・ダラス・ハワード(シャラマン監督『ヴィレッジ』のヒロイン)。元々赤毛なのを金髪に染めているので最初は気がつかなかった。MJのキルスティンは逆に元々金髪なのを赤毛に染めている。どちらも素の髪色のときの方がチャーミングなのはいうまでもない。ブライスはすばらしく上手い役者さんだが、本作のちゃらいモデル役はちょっと役不足でかわいそう。

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毎度、思うがピーター・パーカーの下宿の管理人の娘が妙に可愛い。横溝映画の坂口良子と一緒で、綺羅星の如きヒロインたちよりこういう役が印象に残ったりする。

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映画はいつも「夫婦50割引」で二人分で二千円で見てるのだが、今回はなぜか窓口の女の子に「あ、証明書はいいですよ」と言われた。「見た目でわかるから?」と聞いたら「アハハハ」という答えだった。

否定せんかい!

2007/05/16(水)水森亜土展


先週の日曜日は上野のデパートでやっていた水森亜土展に行ってきた。ご本人のパフォーマンス付き。

私のイメージではないだろうが、もちろん妻のリクエストである。

といっても、実は私もそんなに嫌いではない。

佃公彦風の子どもの絵はどうでもよいが、思春期以上の女性像のセクシーラインは結構なものだ。それも男から見たエロスというより、女の子のセルフイメージとして求めるセクシーさというところか。

しかも「かわいさ」も捨てないで同時にかかえているような欲張りなところが現代風で、今も「亜土ちゃん」として人気を保っている理由なのだろう。

首から上は少女で、首から下は女性。ベティ・ブープも同じフォルムだと思うが、彼女が活躍した当時は完全に男性向けのセクシーシンボルだったはずだ。マリリン・モンローやディートリッヒと同じカテゴリだ。

しかし、そのベティも日本で最近再ブームになったときは、男性向けのセクシーシンボルではなく、女性にとっての「かわいい」キャラクターとしての復活だった。

アメリカと日本の違いなのか、時代的な違いなのかは、わからない。


2007/05/05(土)横溝映画

ということで、NHK-BSで角川映画の金田一耕助シリーズをずっと見てしまった。『犬神家の一族』『悪魔の手毬唄』『獄門島』『病院坂の首縊りの家』。

市川崑はあまり思い入れのある監督ではないが、このシリーズのお蔭で金田一耕助は石坂浩二、彼の泊まる旅館の女中は坂口良子でないと物足りなく思うようになってしまった。

というのも角川映画以前に何度か金田一ものは映画化されているが、原作通りのイメージで金田一耕助を表現したのは『犬神家の一族』が最初だったのだ。私も市川崑以前のATG映画『本陣殺人事件』を見ているが、中尾彬の金田一は噴飯物でした。

今回見た映画の内容については特に書くこともない。ただ、気がついたのはシリーズ通して同じ役なのは主役の石坂浩二だけで、他の常連、加藤武小沢栄太郎大滝秀治草笛光子三條美紀、いずれも映画ごとに違う役柄だということだ。次はあの人はどんな役を振られているのかという楽しみはたしかにある。

常連でひときわ異彩を放っていたのは白石加代子だ。彼女が登場するだけで、一気に画面の空気が変わってしまうものすごさがある。稀代の名女優といっていい。さらに三木のり平伴淳三郎の芸が見られるのだから、チャンネルを合わせる価値は十分にありました。

女優陣はいうまでもなく、美しいが、やはり岸恵子佐久間良子の美貌が図抜けていた。今の女優さんはスタイルは遥かにいいが、彼女たちに匹敵する気品と美貌の持ち主はなかなか現われていないような気がするのは年寄りの視野の狭さでありましょうか。

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私がはじめて読んだ推理小説(探偵小説)は、ジュブナイルのホームズものを除けば、実は横溝正史の『本陣殺人事件』なのだ。父親が貸してくれたのだが、子ども心に「世の中にこんな面白い小説があるのか」と思ったものだ。次がエラーリー・クイーンの『神の灯火』だった。これまた「世の中にこんな面白い小説があるのか」とど胆を抜かれた。

子どもだって、いや、子どもだからこそ、心温まるためになる小説より、少々血が流れ人が殺されるくらいの小説の方が面白いに決まっているのだ。子どもたちにこそ、悪書を与えよ。

2007/05/04(金)大正シック展

山川秀峰「三人の姉妹」どこへ行っても混雑の休日、すいていそうなところと考えた末、東京都庭園美術館に『大正シック〜ホノルル美術館所蔵品』を見に行った。

いわゆる大正モダンの日本画を主とした展示。着物姿の若いご婦人の来場者も少なくなく、展示内容とマッチした会場の雰囲気も合わせてなかなかの眼福でありました。

橋本五葉「髪梳ける女」作品の中では、切手にもなっている、橋本五葉の「髪梳ける女」「化粧の女」「夏衣の女」の三美人画が素晴らしい。いわゆる大正ロマンの甘さがくどくない凜とした画風。西洋絵画の写実性と浮世絵の粋がいい感じで融合している。

顕著なのが髪の描写で、浮世絵木版の精緻な線描で西洋画の奥行きと立体感が表現されている。彫師や摺師もすごい人が残っていたのでしょう。

中村大三郎「婦女」左の絵のモデルは往年の大人気女優入江たか子だそうな。ちょうど昨夜はNHK-BSで彼女の出演する『病院坂の首縊りの家』を見たところだ。瀕死の老婆の役だったが、若い頃は大変な美人だったのですな。

横溝映画特集は連続で放映されてたのを4作続けて見てしまった。今さらだけど、感想は明日にでも。


2007/04/29(日)芝桜の丘

快晴の休日、秩父の羊山公園芝桜を見に行った。

見事な花の絨毯とそれを囲む人の波。美しい日本は泰平なり。

みなさん、花を見ることそのものより、写真を撮ることが主目的のようにお見受けした。もっと花をじっくり見た方がよろしいのではないか。記録より記憶です。

なんて言いながら(撮影はつれあいまかせだが)自分でも写真をアップしているのだから人のことは言えない。悠然と花をスケッチする初老のご婦人もお見かけしたのに、スケッチブック一つ持っていかなかった私など偉そうなことは全然言えない。

若い頃は全然興味がなかった花などを見たい気になってきたのも、老人力の一種なのだろうか。

芝桜といっても桜ではない。花忍(はなしのぶ)科で学名は「Phlox sublata」。Phloxは炎のことだそうな。原産地は北アメリカ。

地に這うようにして咲くが、5弁の花びらは桜そっくりのハート型だ。色違いの品種はは桜よりずっと多彩だ。

あざやかな緋色、さわやかな青紫、淡いピンクの花は良く見ると白い花びらに濃いピンクが走っている。真っ白な品種は雪面のように真っ白で目に痛いほどだ。

これほど色は違っていても、中心の雄蕊(花粉)はみな濃い黄色だ。同じ濃厚な香りが鼻孔を刺激してきて、同じ科・属なことを伝えてくる。

*

芝桜の丘はこの季節のみ有料。外の芝生には、まだ花の残る枝垂れ桜が日陰を作っていた。ここで弁当をつかう。日射しは強いが風が涼しく、うとうとと寝てしまう。

夢は見ていない。


2007/04/22(日)夢百景:角栄&有働

その一 田中角栄

田中角栄連日地方選の宣伝カーの立候補者名連呼を聞かされていたいたせいか、またまた妙な夢をみた。

だれか候補者の選挙事務所でボランティアをやっている。投票用紙にかポスターにか田中角栄の名前をみんなで書いている。

「竹内くんは角栄さんの似顔絵も描いてよ」と言われる。角栄の似顔絵なんて描いたことないし、もう亡くなっているからモデルにもならないし、あわてるがネットでさがせば写真はたくさんあるだろうから大丈夫だろうと思い直す。

亡くなっているのに候補者であることは疑問に思わない。しかしだれかが「田中なら真紀子さんじゃんなかんべ?」と言ったところで目が覚める。

その二 有働由美子

有働由美子NHKアナウンサーの有働由美子さんと一緒に仕事している。有働さんは夢の中ではNHKアナウンサーではなく、取引先のバリバリのキャリアウーマンのようだ。私は彼女の仕事上のソフト開発に雇われたらしい。

有働さんは一度結婚したのだが、交通事故で夫をなくし自分も片足を失ったのだという。「こっちは義足なの」と右足をしめすが、フレアースカートに浮き上がる脚の曲線は美しい。

(義足の一件は先日ひさうちみちおの漫画『山本さん家に於けるアソコの不幸に就いて』を読んでいたからに違いない)

ここから夢はエロティックな色合いを帯びて来るが、情景は単に二人で机をならべて仕事をしているだけだ。ただ彼女が筆記具をとろうとするときなど、左に並んだ私の頭ごしに腕を延ばして取ろうとする。ノースリーブの彼女の腋の下が私に触れ、湿り気が伝わって来る。腕の皮膚は金色に輝き汗が薄く光っている。

それから進展は(残念ながら)ない。フェイドアウトするように終わってしまう。

それにしてもなぜ有働アナウンサーなのだろう。おなじNHKなら、せめて後任の伊藤敏恵さんや、前のお天気おねーさんの荒嶋さんにお願いしたかったところだが、いや、有働さんでもありがたいことです、わがままは言いません。


2007/04/15(日)乱菊物語

Amazon谷崎潤一郎『乱菊物語』(中公文庫)読了。

戦乱の室町時代、播州の太守赤松家と代官浦上家の深核な確執、謎の海龍王と遊女かげろうの伝奇物語など、史実、伝説を題材として、自在な想像力で描き上げた異色の娯楽大作。(AMAZONの商品紹介より)

画像は本書の表紙ではなく、ずいぶん昔に映画化されたときのポスターだ。

この画像通り娯楽色の濃い時代伝奇。反目する両家がついに激突という物語が最高に盛り上がったところで執筆は中断、未完のままというのが惜しい。

滑稽味と雅な道具立てが著者らしいが、特に目立つのが文章の見事さだ。漢文、韻文、美文を自在に駆使して波瀾万丈のストーリーが流麗に綴られて行くのだが、文章にわざとらしさがなく身についたものという感じがするのだ。

最近また時代小説はブームになっていて良い作家も文章の上手な作家もいるが、やはり大谷崎の文章レベルは別物だと思い知らされた。

一応、著者の代表的作品は読んでいるし、文章のうまさなどあたりまえだと思って特に意識したことはなかったのだが、本書のようなエンターテインメント性が強い作品だからこそ、他の作家と比較しての力量の違いを意識してしまったということなのだろう。


2007/04/08(日)My Life In The Database.

ここの日記は、ほとんど読書メモと化している。オフタイムには本を読む以外なにもしていないのだからしかたがないが、やたらたまる読了本、積読をいかに管理するかが問題だ。問題ではないと思う人は、私の年齢になると記憶力が減衰するという事実を思い出してほしい。

ネットの読書系のサイトや2Chanのスレッドをのぞくと、千冊以上の蔵書をデータベースに打ち込んで管理しているという人も結構いる。大変な労力だろうと思う。私も手持ちの本は一応データベースに入ってはいるが、特別に入力に時間を費やしているわけではない。人にたのんでいるわけでもない。下の画像の日記ソフトを使っていることで蔵書登録を自動化(というほどのものでないが)している。

日記というより小遣い帳ソフトと言った方がいい。右上のフォームにその日に使った品目(昼食とかコーヒーとか本とか)を入力して金額を入れ費目を選ぶだけである。費目に「本」を選ぶと別フォームが開いて、著者と出版社と体裁(文庫か画集か等)を入力できる。どの項目も一度入力すると次からは一覧から選べるので手間がかからなくなる。

ここで登録し終わると自動的に未読リストに追加される。読み終わったら、下の「▼」ボタンをクリックすると未読本のリストが出るので、選択するとその日の日付が読了日として登録され未読本から読了本に変更される。ちょっとした感想も書込めるが、あまり使わない。

要するに小遣い帳を付けていれば、蔵書リストも自然に追加されるので、二重に入力する手間がいらないという仕掛けである。小遣い帳を付けるのも面倒だという人にはさすがに向かない。

ずいぶん昔にそんなことができるソフトがないかさがしたが、ぴったりくるものはなかった。しかたがないので、ACCESSとVBAで自作した。あまりデータ登録だと気負わずに使えるのが取り柄だ。使いはじめてから十年以上になるので、データも900件(冊)近くになっている。それ以前の本に関してはもちろんデータベースには入っていない。読み易くするための整理が目的でデータ登録が目的ではないからそれでいいのである。

当時はカレンダーコントロールなんて洒落たものはなかったので、カレンダー機能も自作した。昔はCで曜日計算ルーチン作ってカレンダーを作ったがVBにはWEEKDAY関数があるので楽なものだ。祭日法制の変更には対応したが、春分秋分の日の自動計算は面倒なのでやってない。そのうち気が向いたら入れるつもりでいたけど、締め切りがないとやらないもんです。十年ほったらかし。

こんな全くの俺様ソフトですが、ACCESSとVBAの使い方に興味のある方の参考にはなるかもしれないので、ここにおいときます。確定申告の時期の医療費控除などに結構使えている。記憶力がさっぱりなので、どこそこに行ったのはいつだったかとか調べるのにも、重宝している。……書いていてなんだか情けなくなってきたな。


2007/04/01(日)TV「夢の古代文明紀行」の立花隆

NHK-BSハイビジョン特集『夢の古代文明紀行 謎の巨大遺跡50』第一夜。

出て来る遺跡群はお馴染みのもあり、お初に目にするのもあり、いずれも素晴らしいものでしたが、面白かったのはラストのゲストのコメント。

作家の立松和平が「人間は全然進歩したとは思えないんですね。自然を感じる力などは確実に衰えている。祈る気持ち、宗教的な心を取り戻さないと古代文明の謎は解けないと思う」などと、いかにも番組の流れにそった情緒的な感想を訥々と述べた。

すると評論家の立花隆がすぐに反論する。

私はそういう考え方には異論があって、例えばインカ文明は素晴らしかったけど、その宗教は太陽に生贄をささげたり非合理なものだった。スペインがインカを侵略したのは、銃が自然を滅ぼしたというより、合理性が非合理性に打ち勝ったという面もある

世界は読み解くが空気は読まない立花隆の面目躍如、笑ってしまいました。

考えてみれば、古代文明とはその時点での合理の極みだったはず。当時のモダニズムであり科学と進歩の最先端が今に残されている古代遺跡だと思えば、感傷的に懐古的にのみ眺められるのは遺跡にとっても本望ではあるまい。

*

しかし、立花隆。

インターネットが普及しはじめた頃、ニュース23にゲスト出演して、ネットが知の道具としていかに素晴らしいかをニコニコしながら嬉しそうにしゃべっていた。新しい玩具を手に入れた子どものような笑顔でした。

司会の筑紫哲也がいかにも嫌そうに苦虫をかみつぶしたような顔で聞いていたのが忘れられない。


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