◆ まみむめも - 魔魅夢MEMO ◆  HOME

<前 | 全目次 | 類別目次 | 次>

07/10/28(日) コスモポリタンズ
07/10/21(日) 怪獣は美術だ
07/10/07(日) ワインラベルの巨匠
07/09/23(日) 武部本一郎展
07/08/26(日) 鼻血ブー
07/08/09(木) 信州旅行
07/08/01(水) 三つの訃報
07/07/16(月) 14歳
07/07/15(日) 竜の柩
07/07/08(日) カツ丼のレシピ
07/06/17(日) トムとジェニー/楳図かずおを買う
07/06/02(土) 劇場

2007/10/28(日)コスモポリタンズ

Amazonサマセット・モーム『コスモポリタンズ』(龍口直太郎訳/ちくま文庫)読了。

短編集。収録された30編のほとんどが文庫判で7、8頁、一番長くても20頁に満たない。当時(1924〜29年)の英米文学ではポーのような短編の名手はいたが、これほど短い小説は前代未聞だったらしい。

それだけに2編くらいはエッセイに毛が生えたような話もあるが、ほとんどは意外性のあるラストで締まる切れのある名品ぞろいである。「ショートショート」の元祖と言っていい。

「意外性のあるラスト」と言っても、最近のミステリーショートショートのような驚かすことだけを狙ったような落ちはない。短い中で簡潔に描写された人物の内面が、ラストの科白であざやかに浮かび上がる、という見事な話がたくさんある。うまいものである。

「コスモポリタン」は連載された雑誌名だが、「国際人」の名称にふさわしく、ヨーロッパだけでなく上海や横浜、神戸から南海の無名の島までが小説の舞台になる。鳥羽の養殖真珠なんてのも出てくる。

モームの名人芸を気軽に楽しめる一冊。30編の内、私が一番好きなのは「ルイーズ」。戦慄すべき悪女の話であります。


2007/10/21(日)怪獣は美術だ

三鷹市美術ギャラリーに怪獣と美術−成田亨の造形芸術とその後の怪獣美術−展を見に行った。

伊豫田さん情報により見逃さずに済んで感謝。終了一日前の休日とあって混雑を覚悟したが、意外と空いていた。嬉しいような淋しいような。

怪獣映画怪獣絵画については古今東西かなり見ているつもりだが、ひいきめ抜きで、やはり成田享の怪獣造型力は世界一であると再認識。

成田自身、怪獣造型を手遊びとは捉えていない、本業の「芸術」と不可分なものであったのが伝わってくるのが嬉しい。

TV映像に直接つながるデザイン画は画集等でよく見ていたが、一枚絵として描かれた作品群がとてもいい。ウルトラマン・ウルトラセブンのレジンの彫刻の前にはしゃがみ込んでながめてしまった。また粘土を捏ねてみたくなる。

*

ジェロニモンとグビラのデザイン画はTVより遥かにかっこよかった。

疾走するケムール人を描いた素晴らしい水彩画があったが、あらためてケムール人の正体はアレだろうと思う。


2007/10/07(日)ワインラベルの巨匠

ピカソバルチュス
 牛久ワイナリーで神谷伝兵衛記念館などを見てきた。神谷伝兵衛はデンキブランで有名な神谷バーの神谷。日本ワイン醸造の父だそうな。園内のレストランで食事をしたが、飲んだのはワインではなく地ビール。昼間っから3種類の地ビールを飲み比べて、今は眠くてしかたがない。

記念館は巨大なワイン樽と真っ暗な貯蔵庫は雰囲気たっぷりだったが、まあ想像通り。

展示物で面白かったのは、外国のワイナリーから贈られたというワインのコレクション。ラベルがすべて巨匠レベルの画家の手になるもの。画像は左がピカソ、右がバルチュス。他にデルボー、キスリング、ウォーホール等、そうそうたるメンバー。

バルチュスのラベルは児童虐待だと難癖がついて、米国では絵の部分を空白にして販売されたそうな。ワインは大人の飲み物だろうに、無粋なことである。


2007/09/23(日)武部本一郎展

弥生美術館で開催中の『武部本一郎展』に行った。

もちろん世界一のデジャー・ソリスを描いた武部本一郎。

私にスペースオペラの面白さを教えてくれたバロウズ(ターザンの原作者)の火星シリーズ・金星シリーズ・ペルシダーシリーズの創元文庫の原画がたっぷりあったのは感涙ものでした。火星シリーズの未発表挿絵(未採用の別バージョン)もあったり、ファンの方は見逃さないのが吉でしょう。

天才型ではなかったようで、初期の紙芝居絵や挿絵があまりうまくなかったのはご愛敬。岩田専太郎石原豪人が最初から上手かったのとは対照的だ。ターザンの挿絵などは昭和30年代の作品と15年くらいあとの作品と並べてあったが、出来は雲泥の差だった。やはり創元のSF関係の挿絵を描いたあたりからが最盛期でしょう。そのかわり晩年の作品までずっと筆勢の衰えは感じられなかった。

*

いつも河出書房から出る展覧会に合わせたリーズナブルなムックはなく、内容貧弱で莫迦高い画集があったきり。これならもう一回原画を見にきた方がいいので、当然買わない。

*

近くの根津神社と乙女稲荷神社にお参りする。この辺は根津藍染町、根津八重垣町などの粋な地名だったようだ。今は根津何丁目という無粋な名前に変わってしまっている。

マキャモン『スティンガー』(扶桑社文庫)、小林泰三『家に棲むもの』(角川文庫)、網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』(ちくま文庫)、筒井康隆『ヘル』(文春文庫)、ドーキンス『神は妄想である』(早川書房)、快楽亭ブラック『放送禁止落語大全2』(洋泉社)読了。

マキャモン『魔女は夜ささやく』(文藝春秋社)、サマセット・モーム『コスモポリタンズ』(ちくま文庫)、楳図かずお『私は真悟1〜6』、桑田次郎『ウルトラセブン1・2』購入。


2007/08/26(日)鼻血ブー

ビリー・ザ・ブートキャンプなどで汗を出して夏を乗り切ろうなどと張り切っていたら、好事魔多し。

鼻掃除などしたら、タイトル通り鼻血ブー状態になってしまった。それも粘膜や毛細血管でなくまともな血管を傷つけたらしく、結構な量で止まらない。暑くて少しのぼせてもいたのかもしれない。

元々鼻炎気味で、ひどくなると鼻血がでることもあるのだが、こんなにひどいのははじめてだ。

実は最初に傷つけたのは先週で、医者には一週間はいじるとまた出血するよと言われたのに、守らなかった私が全て悪いのです。

呼吸もしづらくなってきてちょっとパニックになったが、幸い休日診療で耳鼻科が開いていたので、血まみれで駆け込んだ。

両鼻(傷ついてない方にも廻るので)にガーゼをいやというほど詰込まれ、血止め薬を処方していただき、なんとか流血は小康状態。2日後にガーゼを抜くまでは呼吸も満足にできません。情けなや。


そんなことで、折角の休日なのに何もできませんでした。色々、不義理をしているみなさん、すみません、もう少しお待ちください。 (結局、言い訳かい)


2007/08/09(木)信州旅行

去年は松坂で籔内佐斗司作品に遭遇したが、今年は長野の善光寺で籔内佐斗司の作品に出会った。

(日程:小布施→黒部→白馬→長野)

3枚目は、手前の馬鹿も背景のオブジェも、もちろん籔内佐斗司の作品ではない。

籔内佐斗司の世界

*

黒部で見つけた長野名物リンゴをモチーフにしたおみやげグッズ。その名も「リンゴリゴ14」。

どこにもさいとうプロの許諾とかの文字はないのだけど大丈夫なのかいな。


2007/08/01(水)三つの訃報

先週末から思い出深い有名人の訃報があいついだ。私にとっては参院選より大きなニュースでありました。

*

イングマール・ベルイマン

スウェーデンのTT通信によると、20世紀を代表する映画監督で演出家のイングマール・ベルイマンさんが30日、同国フォール島の自宅で死去した。89歳だった。 (7/30:asahi.com)

ベルイマンは本当に大好きな監督だった。以前書いた日記にリンクを貼っておく。→魔術師

*

ミケランジェロ・アントニオーニ

現代人の孤独や絶望感を描いた「太陽はひとりぼっち」や「赤い砂漠」で知られるイタリアの映画監督ミケランジェロ・アントニオーニ氏が30日、ローマの自宅で死去した。94歳だった。(8/1:ZAKZAK)

『さすらい』は退屈で寝てしまった記憶があるが、『欲望』や『情事』はサスペンスフルな心理描写が面白かった。モニカ・ビッティが美しく妖艶だったし。

*

カール・ゴッチ

“プロレスの神様”として知られ、無我ワールド・プロレスリングの名誉顧問を務めるカール・ゴッチ(本名カール・イスターツ)さんが28日、米フロリダ州タンパで亡くなったことが分かった。82歳だった。(7/30:ZAKZAK)

40年近く昔に国際プロレスに来たとき(ゴッチは40代前半だった)、当時でも200kg近くあったモンスター・ロシモフ(アンドレ・ザ・ジャイアント)をジャーマンスープレックスで投げて固めたのを見た。凄かった。相手がジャンプしたんじゃないのなどという書込みが2ちゃんにあったが、リアルで見た私が断言する。そんなことはない。

50歳近いときには猪木のキーロックを片手で持ち上げてはずした。そんな外し方見たことなかった観客はどよめいたな。格闘技系のような言われ方するけど、スタイリッシュなプロレスラーとしてすばらしかったと思う。

本物の河津掛け(後ろにバタンではなく、かけた脚を軸に相手を放り投げる)はこの人が猪木にかけたのと、相撲の陸奥嵐のしか見たことない。

2007/07/16(月)14歳

Amazon楳図 かずお『14歳』(小学館文庫)読了。

文明が荒廃した近未来。バイオ鳥肉の細胞から誕生した天才科学者"チキン・ジョージ"を中心に、滅亡の危機に瀕した人間たちの苦闘を描く、楳図ワールドの集大成的作品が、待望の文庫版で登場。 (AMAZONの商品紹介より)

昨日の口直しではないが、SF漫画史どころか日本SF史に残る傑作。読後のインパクトは『火の鳥未来編』も『アキラ』も到底およぶところではありません。

著者の休筆直前作ということもあって、途中から絵があきらかに荒くなっていく。絵に楳図独特の生理的怖さが感じられないのが少し物足りないが、人類・宇宙の未来史という壮大なテーマを怒濤のようなストーリーテリングで語り尽くすドライブ感は素晴らしい。

未来の車・都市・宇宙船といったガジェットは、現在の漫画のスマートなメカニカルな描写と比べれば泥臭い。泥臭いがオリジナリティバリバリの楳図にしか描けない未来のオブジェクトは、ハリウッド紛いの「SF」漫画にはない面白さでいっぱいだ。

ただ、ラストが端折り気味なのが惜しい。ラストの感動は『漂流教室』の方が上ではある。その分スマートにまとまった『漂流教室』にはない異様なわけのわからなさがある。目を疑うような性的な暗喩・直喩も満載で、今、もう一度読み直したくてしかたがない。


2007/07/15(日)竜の柩

Amazon高橋克彦『竜の柩』(祥伝社ノンノベル)読了。

“竜とは何か?なぜ西洋では悪魔、東洋では聖なる存在なのか?”古代文化の栄えた津軽十三湊、長野皆神山ピラミッド、諏訪と出雲…。奇怪な土地買収事件を発端に、各地に残る“竜”の痕跡を辿り始めたTVディレクター九鬼虹人に執拗な妨害が連続した。やがてローマ・ヴァチカンの黒い影が浮上し、謎を追って九鬼はインド、パキスタン、トルコの調査行に旅立った…。待ち受ける敵と謀略。“竜”が語る驚愕の真相とは?文明史とその定説を覆す壮大な推理で激賞を浴びた大河伝奇巨編。 (AMAZONの商品紹介より)

左の画像は講談社文庫版の表紙

紹介文にある通りムー系の伝奇小説で、半村良など数少ない良質の例外をのぞいて、あまり私が好みとするジャンルではない。しかし、ネットでは結構評判が良く傑作だとの声も高いので、読んでみたのだが……

冒頭に登場する人物の名前が「九鬼虹人」「咲村純」「東哉期」「緒方連一郎」「有明蓉」「宗像剛蔵」というネーミングセンスなのには嫌な予感がした。予想違わず、いやあ、読み終わるのがきつかった。

バカ話はきらいではないし、本書も世界の伝説に竜=空飛ぶ円盤説を探すバカ話の部分だけ拾い読みしていけばまあそこそこ面白い。しかしそれらをつなぐ地の部分=人間のドラマ部分がなんとも稚拙で退屈きわまりない。

バカ話も単なる雑多な事実をつなぎあわせてスゴイでしょと言っているレベルで歴史観をくつがえす斬新な視点も、仮説に託した思想性もない。

文章は輪をかけてひどい。「無惨そうな視線」という日本語になってない表現や、役不足の使い方を間違っていたり、科白はくさいわ青いわ、もうプロの作家のレベルとは到底思えない。

下手なアクションや敵役との闘争などはやめて『星を継ぐもの』のように歴史トンデモミステリーの謎解きだけで構成したらまだ面白かっただろう。別に惜しいとは思わないが。

*

年の功で、本の選択は誤らなくなってきたのだが、たまにはこういうこともある。

心はずまないが、つまらなかったというのも情報のうち、と思い一応書いておく。


2007/07/08(日)カツ丼のレシピ

週末は珍しくかみさんが風邪を引いて熱を出していたため、ひさしぶりにおさんどんをすることになった。

病人はおかゆに玉子か梅干しを落としてやればそれでいいのだが、腹っぺらしのいつ帰るかわからない餓鬼はそういうわけにもいかない。私も結構空腹だし、会社の帰り(金曜夜)にスーパーで豚カツを2枚買った。

ソースとキャベツの千切りだけでは、揚げ立ての自家製ならともかく出来合いのカツレツではちょっとさびしい。一手間かけてカツ丼にすることにする。

さいわい冷蔵庫には長葱があった。カツ丼には玉葱というレシピが多いが、ちょっと甘すぎてしまうので私は長葱を使う。

まずタレを作る。めんつゆを薄めるだけでも良いが、出しをきかそうとすると塩味が強すぎる。簡単なので自分で合わせる。以下の通り(分量は2人前)。

長葱大1本をざく切りにして上記の出し汁で煮る。葱が透明になったら火を止める。

丼にご飯を盛っておく。

親子丼用の片手鍋に切ったカツ一人前を並べ、煮汁と葱を入れて火にかける。軽く煮立ったらかき混ぜた玉子を廻しかけ、表面が固まりはじめたら煮すぎないうちに火から下ろし、丼のご飯の上にさっとのせれば出来上がり。

誰か帰ってくればそのたびに一人前ずつ作れるのが丼もののいいところ。面倒くさくなったら自分でやらせればいい。

*

土曜日は冷凍の味付け鶏肉を残り野菜(キャベツ・人参)とニンニクをたっぷり入れて炒めてなんとか格好をつける。なんだか疲れたので(疲れてなくても)洗い物や掃除は子供にまかせる。

日曜日にはかみさんも元気回復。やれやれ助かった。料理をするのは嫌いではないが、献立考えるのがいやなのだなあ。生来の不精者なのでしかたがない。

2007/06/17(日)トムとジェニー/楳図かずおを買う

友人がセカンドライフに開いたギャラリーの猫テーマ展示用に描いた絵をこちらのギャラリーにも登録。

肝心のセカンドライフはインストールはしたのだが、私のマシンが旧いせいか(旧いせいだ!)クラッシュしまくりでログインできないでいる。今日一杯格闘してだめだったら、会社のマシンにインストールしてしまえ。

ヤフオクで楳図かずおの漫画を続けて落とした。

一点は私の妻が推奨の『ミイラ先生』。 初期の正統的怪奇少女漫画。今、読むとつっこみどこ満載で結構笑える。

もう一点は作者の最高傑作との評判ながら未読だった『14歳』全巻揃い。(17冊が新書判、2冊が文庫判だった)。

さすがに油の乗り切った頃の作品らしく、絵が力強く濃い。楳図かずおと諸星大二郎の全盛期の絵はすぐわかる。描きこみが半端でなく、画面が全体的に黒々としている。

14歳』も冒頭からえぐいシーンのつるべ打ち。これは楽しみだ。じっくり読むとするべえ。

2007/06/02(土)劇場

Amazonサマセット・モーム『劇場』(新潮文庫/龍口直太郎訳)読了。

天性の才能を駆使し、堂々たる舞台女優となった46歳のジュリア。彼女は、美男俳優で劇場経営者でもある夫や、20年来プラトニック・ラブを捧げ続ける貴族に囲まれていたが、たまたま劇場の経理を担当した23歳の青年トムに夢中になる。そして、トムの心が新人女優に傾いたのを知ったときジュリアは…。(AMAZONの商品紹介より)

全然知らなかったが今春映画化されて公開されたらしい。華やかなトップ舞台女優がヒロイン、上記紹介にもあるように彼女を取り巻く男たちも美男ぞろい、いかにも映画向きな小説のように思える。

しかし、この小説の面白みはヒロインの独白にある。地の分での小難しい心理描写が少ない代わり、いかにも女優さんらしいリアルな心理の変化を表現する独白が巧みだ。モームはうますぎる。

だから本当の意味で映画向きかどうかは疑問だが、小説としては実に面白い。恋愛のかけひきの描写は精緻だし、恋愛が大きな要素が占めるのはたしかだが、決して恋愛小説ではない。

中年を迎えたヒロインが自分の女性的魅力に疑問を感じ、若い恋人から裏切られ、実の息子から生き方を否定され、普通だったら陰鬱な展開になりそうなシチュエーションが続くのだが、モームの造型したヒロインはこれらの危機に天性の演技力で立ち向かうのである。結構かっこいい。

ラストはこの小説が恋愛小説であることを否定しつつ、いかにも大人の物語らしい場面で締めくくる。読後感はとてもいい。


<前 | 全目次 | 類別目次 | 次>