網代温泉
2005年10月01日(土)夕方〜夜
網代駅に到着である。
ネットでDLした宿までの地図を片手に美津濃君と2人でどっちに進めばよいかと少し考えていたが、だいたいの位置関係はわかった。あとは進むだけ。地図に描かれたランドマークたるコンビニがなかなか見あたらなかったのだが、それは駅前商店街の奥まったところにあった。
「ああ、あれかぁ!」と私は美津濃君にコンビニを指し示したら、背後から私の口調をそっくり真似た「ああ、あれかぁ!」との声が聞こえた。振り返ると同じ旅行者らしき若い男が2人いた。私の口調がどんなに滑稽だったのかは知らないが、何故繰り返すのかね。口調や仕草の模倣はされた方としては挑発以外の解釈を出来ない。思いっきりガンをつけてやったら2人はそそくさとどこかへ行ってしまった。私が悪意を持たないとでも思ったのかね。仲間内で目に入った人間をネタにしたいのならば、もっと当該人物にわかりにくくやりなさいって。
さて、気を取り直して駅前商店街を歩いていたら、長毛種との混血とおぼしきにゃんこが。
今回は猫をよく見る。
海に緩やかに流れ込むこの川が、いかにも温泉街だ。
ちなみに我々が逗留するのは、右手に見える赤い屋根の年代物の宿である。
家族でひっそりとやっている穴場的な宿だ。
窓で涼んでいる逗留客らしき姿も見えたが、いかにも常連っぽい。
さっそく部屋へ通される。
この二重の窓。風情がある。
モスクワの建物だと、ここの窓と窓の間を冷蔵庫代わりにするのだ。
もちろん日本家屋ではそうした役割はされほど期待されていないだろうけど、ちょっとしたものを置くのには便利だ。
非常用懐中電灯が錆び付いていたので点けてみたら、ちゃんと明るく灯った。
電池と電球の取り替えはしっかりしているみたいである。
もっともホテルの懐中電灯は、高校の修学旅行のときに東京のホテルで停電があったときしか必要があって使ったことはないが。しかし備えは必要であり、宿泊客はその位置を確認しておく必要はある。
廊下に冷蔵庫があり、そこから勝手に麦茶を持ってきてよいとのこと。
今まで散々歩いてきた為、疲れたし喉も渇いた。
さっそく喉を潤させて貰う。
そして、夜飲む酒とつまみを調達しに駅前商店街へと再び出た。
ここがさきほど長毛種めいた猫が入っていった写真屋だ。
よく見たら、別の黒猫が店内で身体をなめている。
猫好きな店なのか。
コンビニで酒を調達して宿に戻ろうとしたら、店先のカゴにさきほどの黒猫、その下にしまねこが。すばらしい光景。私はデジカメしか持っていなかったが、もしフィルムカメラを持っていたらここの店でフィルムと電池を買って売り上げに貢献しつつ店主に話しかけ、猫に触るところだ。
そして少し離れたところに、最初に見た長毛種めいた猫が。
人が近づいても逃げないが、いざ触ろうとすると少し後ずさって逃げる。
観光地の猫は触られる機会が多いから、間合いを心得ていらっしゃる。
そして部屋に戻って酒を買い物袋のまま共用冷蔵庫に収納。
さっそく温泉につかることに。久々に浸かる温泉は、院試の対策で机に向かうことが多く、また試験のためビジネスホテルに泊まるがほとんど寝られなかったこともあり、あちこち凝っていた身体をほぐすのに役立った。
風呂から上がるとちょうど「ガンダムSEED-D」の最終回の時間だった。
今日だけ1730時からの開始。
覚えていて良かった。
そして風呂上がりに早速ビールを1本。
ルナマリアにも乾杯。
それにしても最終話・・・。
広がった話がうまく収束するという期待はしてなかったが、予想通り続編かOVAが作られそうなラストであった。
夕食が出来たとのことで食堂へ。
焼いた川魚に、マグロやタコ、エビの刺身。
カボチャの煮物に、写っていないが野菜の天ぷら。
佃煮に、貝のみそ汁。
久々に人間らしいメシを食いました。
院試の最中はホテルでコンビニのパンとおにぎり、アパートに戻ってからも、台所の片付けをするヒマがとれなくてインスタント食品や冷凍米が多かった。それが一変して、暖かいご飯に新鮮な魚介類。もちろん昼飯に食ったチキンカツ定食もうまかった。しかしこうして座敷で、それも明らかに宿を経営している家族にとっての食卓でもあるテーブルで、炊飯器から自分で米をよそってたべることのり暖かみは格別だ。なかなかうまいメシでした。
そしてメシを終えてからは、自室でしばらくくつろいだ。
美津濃君は按摩を得意とするが、今まで私が掛かったことは一度もなかった。
今回は私が掛かってみることに。
長い時間かけて背中から腰から肩から足の裏までほぐしてもらい、院試準備でずっと机に向かっていた凝りと、睡眠時間が乱れて溜まっていた疲労が、一気に軽くなった。やはり人に按摩をされることの効果は絶大である。これは感謝ですよ。
腹が落ち着いてからは、再びビールにつまみ。
ビールを飲み干したら、コンビニに於ける一番上等な酒、ジョニ黒を。
私は酒に弱くなっているので、このぐらいの量で十二分。
ジョニ黒とは懐かしい。大学時代はこれが好きな後輩がいて、よく飲んだものであった。かつてはサラリーマンにとってはあこがれの酒だったのだが、私の学部時代には酒税の改正と円高によって学生でも手の届く酒となっていた。その上、さすがは関東の私立大学。わりと裕福な家庭の出の人間が多く、札ビラ切ってジョニ黒を何本も買い込んで、飲み会の最初の一杯で飲み尽くしてしまったこともあった。思い出深い酒だ。
そして美津濃君の持っていた旅行用充電器。これがまた、部屋のプラグはもちろん、車のシガーソケット、乾電池、さらにはPCのUSBからさえ電気を取れる。機会があればどこからでも電気を掠め取ろうとの代物なのだ。なかなか使えそうだ。だが問題は、コードを引っ張り出したら二度と戻らないこと。安物の特殊警棒みたいに、一度出したらコードが引っ込まないとは。なかなか面妖な商品であった。
かくして酒をやりつつ、四方山話などして夜は更けたのであった。