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最後の戦士達

「明日出発なの?」
 トライファリスが来る。
「ええ。ユメは今さっき、仲間になりそうな人を集めに行ったわ」
「そう」
 トライファリスは一旦言葉を切った。
「わたしたちはどうなるんだろう」
 トライファリスは自分が今入って来た出入口を見つめた。
 セイウィヴァエルもそちらの方を見た。
 ユメはどんな人を連れて来るのかしら。わたしたちはどうするの?

 ユメルシェルは一人で戻って来た。
「他の人達は?」
 セイウィヴァエルが聞く。
「荷造りだ。もうすぐ来る。セイ、トライ、お前たちも準備しろ」
「わたしたちも? それじゃあ」
 トライファリスが驚きの顔で言う。
「早くしろ。間に合わなくなるぞ。紹介もしたいしな」
 喜び合う二人をユメルシェルは急かした。
 最初にテントに入って来たのは、黒い髪を短く切った、背の高い男だ。
「カムスティン」
 セイウィヴァエルがその男の名を呼ぶ。カムスティンはセイウィヴァエルの方を少し見たが、そのままテントの床に座った。
 次に来たのはナティセルだった。セイウィヴァエルが驚いてユメルシェルの顔を見る。ナティセルが戦力になるとは思えない。
「これで全員だ。知っていると思うが紹介する。ビョウシャ=ナティセルとモカウ=カムスティンだ」
 ユメルシェルが二人の方を見て言う。そしてセイウィヴァエルとトライファリスに自己紹介するように言った。
「ホイ=セイウィヴァエルです。歳は十五歳。『気』を使う技を使えます。あ、わたしを呼ぶときはセイで構いません」
「ヤラフ=トライファリス、トライです。同じく十五歳。セイの家に一緒に住んでいます」
 カムスティンが笑顔を作る。
「さっき一応紹介して貰ったが、カムスティンだ。カムでいい。歳は十七。魔法使い見習い、ってとこかな」
「ナティセル。十六歳。みんな、ここに俺が居るから驚いただろう。俺は戦力にはならないかもしれないが、雑務をする」
 笑いが起こる。
「ナティ、嘘は言うな。ナティは頭がいいから、そこをユメに見込まれたんだ」
 カムがナティをフォローした。
 ユメは自己紹介はせずに、出発についての注意をした。
 その後、ナティとセイを連れて病院の薬部屋で、旅に必要な分を用意した。
 セイが薬部屋から戻って来た。
「ナティとユメは?」
 カムが尋ねる。
「まだ終わりじゃないの。薬草を入れる袋を取りに来ただけ」
 セイは答えて、トライが居ないことに気づく。
「トライは?」
「火種を隣に貰いに行った。もうじき暗くなる。彼女が戻るまで待てよ。明かりを持って行った方が良さそうだからな」
 外は夕焼けが奇麗だ。太陽の光を遮っていた雲が流れて、光がセイの目に入る。眩しさに横を向くと、カムは平気な様子で同じ太陽を見ていた。
「カム、あなたすごいのね。あんなに魔法を使えるなんて」
 セイはさっきの試合のときから感じていたことを言った。
「全然すごくないさ。たったあれだけで、すぐに力がなくなってしまう」
 カムがセイを見た。セイは返す言葉がなくて黙っていた。
「セイが居てくれて良かった。ユメやトライのような恐ろしい女ばかりじゃ、旅はつまらないからな。……トライが戻って来た」
 カムが意味ありげな言葉を言った。
 ただの褒め言葉とは思えなかった。が、トライが戻って来たというので、セイは考えるのを止めた。
 明かりに火を灯し、病院に行く間にも、カムの言葉が頭の中を巡っていた。カムの言葉に嬉しいと感じたのは事実だ。自分が居ると旅が楽しくなる。そう言われるのに悪い気はしない。
「セイ、遅かったな」
 言われてハッと我に返る。ナティとユメ、どちらに言われたのか分からなかった。
「ええ。暗くなるから、明かり持って来たの」
「もうそんな時間か」
 ユメが言う。
「だが今日中に用意しないと、な。セイ、袋は?」
 ナティがセイに尋ねる。
 袋を渡そうとするが、その袋がない。忘れて来たのだ。
「珍しいな。セイが頼まれたことを忘れるなんて」
 ユメがセイの後ろ姿を見送りながら言う。ナティは笑っていたが、ユメは笑わない。
 病院からテントまでは結構ある。今日中に準備しなければならないのに、時間を無駄にしている。
「これは何の薬だ?」
「それは熱さましだ。さっきのよりも強力だから、高熱が出たときにだけ使う」
「それならあまりいらないな……」

「セイ、もう終わったの?」
 トライが聞く。
「違うの。袋を忘れてたから取りに来ただけ」
 袋を掴むと急いでセイは戻った。カムをちらっと見たが、カムはセイを見なかった。

「これでいいだろう。ユメ、コヒの宮までの道は知っているか」
「いや。だがセイが地図を持っている」
 セイが地図を取り出す。コヒの宮は大洋に浮かぶ小さな島にあった。
 テントに戻り、カムとトライを加えて道順を決めた。
「まずエクシビシュンに渡って、そこからコヒの宮のある島にに船で渡ろう」
 ナティが言う。
「エクシビュンにはどうやって渡るの?」
「セイは行ったことがないのか? 海峡だから橋で繋がっているんだ」
「そりゃあ、カムは知っているだろうけど、わたしたちは初めて行くんだもの」
 セイがトライの方を見て同意を求める。
 明日の出発は日の出の時刻となった。カムとナティは自分たちのテントにそれぞれ戻り、ユメたちは眠った。

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