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2007-03-17
tanim007_org
メガスクイード

使用ソフト:Painter6.0.1J

Amazonドゥーガル・ディクソン、ジョン・アダムス『フューチャー・イズ・ワイルド』(松井孝典監修/土屋晶子訳/ダイヤモンド社)登場する体重8トンの陸棲巨大イカ「メガスクイド」(megasquid)。

冴えた着想、しかもめっぽう面白いこの未来の博物誌(アニマル・プラネット・チャンネルの最近の七回シリーズの手引き書でもある)で、地質学者であり古生物学者のディクソンと、自然史テレビスペシャルのプロデューサー、アダムスは、今から2億年後の地球にはどんな生命が生きているのかに思いを馳せる。

惑星進化についてコンピュータを使った約110ものイラストを駆使し、著者たちは、地球全体に広がる超大陸(パンゲアIIと呼ばれる)いっぱいに、青い大きな空飛ぶ翼竜や、発光性のサメ、象の体とイカの触腕と「スター・ウォーズ」のジャバ・ザ・ハットの顔を繋ぎ合わせたような森に住む巨大なイカなどを描き出す。(AMAZONの商品説明より)

えー、上の説明通りの本です。出て来る空想生物の姿と設定が楽しい。

しかし、かつてのドゥーガル・ディクソン本『アフター・マン』や『新恐竜』は大型本だったのに、本書は四六判の普通のハードカバーになってしまった。文字は多いが画期的なことが書いてあるわけではなく、肝心の絵が小さくなってしまったのが残念だ。

前記2冊も大型本は絶版で、今は本書と同じ版元から小さくなって出てるようだ。これから手にいれようという人は古書店で旧版の大型本をさがすことを強くお勧めする。迫力が段違いなのだ。

絵そのものもいかにもコンピュータ・グラフィックな3Dになってしまい、個性がなくなってしまった。『アフター・マン』『新恐竜』のディズ・ウォリスのイラストの方がずっと迫力があって好きだったなあ。

*

スタンフォード大生物学教授だというパルンビという人が本書の序文を書いているのだが、読んでいて次の部分に違和感を感じてひっかかってしまった。

2億年間。地球の歴史から見ればほんのまばたきほどの短い年月のあいだに、これほど多くのまったく新しい生物が進化して栄えるようになるとは、いったい誰が想像できただろうか。

言いたいことはわかるが、2億年は本当に「地球の歴史から見ればほんのまばたき」なのだろうか。

地球の誕生から約50億年、これからどのくらい存在するかわからないが太陽の恒星としての寿命を考えるとあと50億年がいいとこだろう。よって地球の寿命は100億年。人間の寿命を100年とするとちょうど一億倍だ。すると地球にとっての2億年は、人間の寿命に換算すると2年になる。

どう考えても「ほんのまばたき」ではない。46歳から48歳までならたいした変化はないが、12歳と14歳と16歳ではずいぶん違う。地球にとっても2億年は決して短い期間ではあるまい。

つまらないことにイチャモンをつけているようだが、科学解説書がおおげさな比喩を使うのは、素人を馬鹿にしていることに他ならないと思うのだ。

たとえば、この分野の大先輩アイザック・アシモフなら、こういういいかげんな比喩の使い方はしなかったろう。むしろ2億年が地球にとってどのくらいにあたるのか、面白おかしく、しかも興味深い考察をして読者に楽しい一章を提供してくれたに違いない(例:『空想自然科学入門』の「まあその辺の大きさだ」の章)。それがプロというものだ。

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