飛べない翼　一緒に

　一緒に飛ぶことはできないけど、今日は一緒にお祈りに行こうか。
「本当？　嬉しいよ。神さまはみんなに優しいから、きっと君のお祈りも届くよ」
　神さまがみんなに優しいなら、君の願いはとっくの昔に叶ってるよ。
　僕は知ってるんだ。君が同じことを、もう何年も続けてるってこと。
　天人って、みんなバカだよね。なんで神さまなんか信じてるんだろう。
　君には、そんなこと言えないけどね。
　崖に沿った道を上って、高いところへ出る。
　本当に眩しいよ。気持ち悪いくらい幸せそう。
　小さな祠があって、君はそこに向かってお祈りする。
　僕は、何て祈ればいいの？
　君の妹のセラフが、早くよくなりますように。
　背中が熱いよ。
　焼けるようだ。
　もう代償はないんだ。僕の背中の翼は、最初で最後のお願いの代償に消えた。
　今度は命を捧げればいいの？　カミサマ
　お祈りしても、駄目かもしれないね。
　僕はそう言った。
　神さまは、優しくなんかないんだよ。代償が、必要なんだよ。