理由
「本当は、僕のせいなんだ」 神さまにお祈りする祠の前で、君は突然泣き出した。 「セラフがまだ飛べないのに、僕が一緒に飛んであげるからって言って、無理やり崖の上から飛ばせたんだ。でも、僕の力じゃセラフを支え切れなくて、セラフは下に落ちたんだ」 そうだったんだ。 「だから、妹は、僕を恨んでるんだ。だから、どんなに祈っても正気に戻らないんだ」 でも、僕知ってるんだよ。そのとき、君が妹さんを支えられると思ってたのに、できなかったのは、突然崖の下から吹いた風のせいだって。 「なんで、知ってるの?」 君は僕を見た。 そのとき、近くで見てたからだよ。 崖の下のあの場所で。 君の妹が落ちてくるのを見ていたんだ。 君の妹のセラフが、僕の世界の偉い人に気に入られて、僕はその人の命令で、セラフを連れて行くことになったんだ。 「どういう意味?」 君の表情が歪んで見えるよ。 駄天使って知ってる? 地獄に堕ちた天使のことだよ。 僕の世界の偉い人は、そうすれば、セラフが君を恨んで、堕ちて来ると思ってたんだよ。 でも、セラフは堕ちなかった。この世界に留まってる。それは、君を恨んでなんかいないっていう証だよ。 「じゃあ、君は、セラフをまた奪いに来たの?」 冗談か何かだと思ってるかな? だって君は、僕を友達だと思ってるんだもんね。 ごめんね。友達になれれば、僕が君を救ってあげられるかと思ってたけど、無理みたいだ。反省してるよ。 さようなら。 崖から僕は飛び降りる。落ちるのは、僕だ。これ以上、堕ちようがないけれど。 花畑が、近くなる。 でも、飛び降りた僕は、落ちなかった。 君が助けてくれたの? もういちど飛べるようになったんだね。 「翼がないのに、飛ぼうとしないで。君まで居なくなったら、もうどうしたらいいかわからない」 ああ、君は本当に天使だね。こんな僕のために涙を流してくれるなんて。 その大きくて真っ白な翼は、僕のためではなくて、妹さんのために使ってあげて。 |
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